じぇれ

この世界の片隅にのじぇれのレビュー・感想・評価

この世界の片隅に(2016年製作の映画)
3.7
とにかく丁寧な映画。モノローグと台詞を多用し、すべて説明しています。テレビアニメではないのですから、もっと画で感じさせてほしいものです。
おまけに、はじめから話がとっちらかっていて、物語がどこに進むのかわかりません。特に恋敵の存在が、映画が前に進むのを邪魔しています。

これらは、おそらくクラウドファンディングの弊害なのでしょう。出資した多くの原作ファンのために、可能な限り原作をトレースしている印象です。
でも、約2年かけて連載された物語の構成のまま、2時間にまとめたら散漫になって当然なんです。
もっとヒットしたら30分追加するという話がありますが、やるべきことは逆です。90~100分でまとめるよう、プロットを整理し直すことです。

そんな訳で、最初の1時間は観たことを後悔していました。5分に1回ぐらい訪れる章の終わりのオチには微笑みながらも、全くノレませんでしたから。

しかし、邪魔な恋敵も消え、ようやく話に1本の核が見えた85分ぐらいから、この映画は変貌します。
アニメでなければできないイメージの飛翔も見事で、ここからの40分間は心をかき乱されつつも、ヒロインの心と寄り添っていくことになりました。

つまりは、最終的には観てよかった作品だと感じたんですね。

最後に1つ。
本作には様々な戦時中の事象が描かれ、資料価値が高い作品となっています。劇映画としては、前半があまりにも冗長ですが、資料として見れば有益です。
85分ぐらいに亡くなる人を他のキャラクターにした、子供向けのバージョンを作ってはいかがでしょうか?
さすがに今のままでは、小学生には少々過酷ですから。
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