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この世界の片隅にのYASUUのレビュー・感想・評価

この世界の片隅に(2016年製作の映画)
4.0
128分のアニメにしては長尺です。そのため戦争当時の庶民の暮らし振りを丁寧に描いています。原作のコミックに比べれば、短縮しているらしいですが。(まだ読んでいない)
第二次世界大戦を題材にしていますが、軍隊を主にするのではなく、庶民の生活に焦点を当てています。
前半は本土空襲が始まる前のどちらかというとのどかな田舎街の様子を描いているので、
ちょっと退屈感が。
本土空襲が始まった後半からはそれまでの状況が一変。主人公が身内を失い、大切な右手も失う衝撃的な出来事が襲います。
シーンの合間にカウントダウンのように日付が表示されていきます。舞台は呉と広島。
呉は当時、軍艦の停泊地だったこともあり、頻繁に空襲に会います。そして広島は昭和20年8月6日に原子爆弾が投下されました。
スクリーンに表示される日付が原爆投下までのカウンダウン。何も知らない主人公は居場所がなくなった嫁ぎ先から広島の実家に帰ろうとします。
原爆投下まで数日。失った右腕の治療のため、8月6日までには帰省できず、嫁ぎ先の呉で被災を知ることになります。観ていてほっする瞬間でした。
終戦を迎え、苦しいながらも平和な生活を取り戻せた主人公に、安堵させられました。
前半の退屈な平和な生活と後半の悲惨な状況。そして迎える終戦と未来への希望。
本作は反戦映画として稀有の傑作です。

映画の最後に出演者や製作者を紹介するテロップが流れますが、本作はここもよく観て欲しいです。

終戦後に広島で出会った孤児の女の子。
本編中に原爆に会い、母親が死に、蛆やハエがたかるシーンも描画されます。こういうシーンは戦争の悲惨さを伝えるためには必要なんでしょうが、アニメとはいえ、ショッキングなシーンでした。
主人公とその夫はこの孤児の女の子を呉の家に連れて帰りますが、彼女のその後の様子が描画されています。
その姿が、戦争中に死んだ主人公の身内の女の子と重ね合い、何か救われたような気がしました。

もうひとり、主人公が呉の街で迷子になり、そこで親切に道を教えてくれた女性(娼婦のようでしたが)。実は彼女は昔、広島の主人公の実家で貧しい姿でスイカのヘタをあさっていたあの女の子だったのです。あのとき、主人公は新しいスイカと自分の着物をあげました。彼女はそれを忘れずにいました。

そんな縁を最後のテロップで描画していますので、よく観ていてくださいね。
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