紅孔雀

この世界の片隅にの紅孔雀のレビュー・感想・評価

この世界の片隅に(2016年製作の映画)
4.9
見終わった後も、声優のんの口調と水彩画のような画面のリズムが、私の体をゆったりと包んでいるようでした。
そして、この時代の細部までを描くため、アニメという手段が必然的に選ばれたのだ、という思いもまた深かったです。
日付が表示され、あの運命の日まで徐々に近づいていく、という緊迫感。そして何もかもが異常になっていく戦争末期に、なお「普通」でいる主人公すずの有り難さ。幼馴染みの水原が「すずは普通でいてくれる!」と叫ぶ、一夜のエピソードが心に刺さりました。
そしてクライマックス。玉音放送を聞いたすずの慟哭に心が震え、静かな涙が流れました。
というか、ずーっと心が波だっていたような気がするのは、あの時代の日本人の健気さに、ただただ感動していたからかもしれません。若きレビューワーさんたちが、この先人達の労苦に対し、最大限の共感と賛辞を捧げている(そして中にはクラウドファンディングに参加もしている)のを知って、まだまだ日本も捨てたもんではないなぁ、と思いました。
戦中、戦後、そして“もはや戦後ではない”時代に生まれた人々を繋ぐ、世代を超えた名作と思います。
紅孔雀

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