nagaoKAshunPEi

この世界の片隅にのnagaoKAshunPEiのレビュー・感想・評価

この世界の片隅に(2016年製作の映画)
5.0
大傑作と言うべきか、もはやクラシックと言っても過言ではないほど、とてつもない熱量を帯びた作品だったと思う。

題材は、もちろん「戦争」であり、映画全体を見てみれば、「反戦」という大きなメッセージが浮かび上がってくる。しかし、あえてそれを全面に押し出さず、「戦争苦あるある映画」として、いわゆる「日常系」として描いたことが他の戦争映画とは一線を画していた。
食料がない。野草を摘んで食べる。闇市高い。空襲飽きる。米軍の配給めちゃくちゃ美味い。など、当時の市民にとって、戦争は生活の一部として捉えられており、隣り合わせにあるからこそ、「日常」が「非日常」へと変貌する瞬間の無慈悲さを、より痛感させられる。
当時の人間にとっての当たり前の出来事が今の自分たちにとっては、けっしてあり得ない出来事であり(そしてその逆も然り)、巡り巡って「反戦」というメッセージを打ち出しているのではないか。
現に、白米を食べられる、という今の自分にとっての当たり前が当時の人たちにとっては特別な瞬間であるということを気付かされたし、映画を観てから数日は、白米が炊けた炊飯器を開けるだけで目頭が熱くなった。

最終的には、人間は足りない部分を補ないあって、寄り添いあって生きている、というあまりにも普遍的な着地点にも、号泣してしまった。大傑作。
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