あおや

この世界の片隅にのあおやのレビュー・感想・評価

この世界の片隅に(2016年製作の映画)
4.5
2017年一発目の劇場鑑賞。ロングランということもあり再び劇場にて二回目を鑑賞してしまうほどに印象深い作品。この映画で描かれている“戦争”は主人公すずの視点からみえるそれである。いち庶民の、しかも普通の女性である彼女の視点から描かれる戦争は、いままでいくつか見てきた軍部や軍兵にフォーカスが当てられた戦争映画とは大きく異なるものでありとても新鮮に感じられる。厳しいはずの戦争最中でも楽しく生きようとするすずの姿は微笑ましく、彼女のまったりとした性格も相まって戦時中の日常描写の中にもクスッと笑えるシーンがたくさんあるところがおもしろい。なおさらすずの“日常”が、逃れられない戦争という荒波に呑み込まれていくのには胸が苦しくなる。玉音放送後にすず感情が爆発する場面はとても印象的。また、絵の具でのすずの心情描写やワニが出てくる場面などアニメーションでしかできないであろう演出もとても上手く使われていた。伏線の回収もお見事。戦争を全く知らない世代である自分にも本当に心に響くものがあったなあ。これは泣けたぜ。
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