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この世界の片隅にのりのレビュー・感想・評価

この世界の片隅に(2016年製作の映画)
3.7
本作では、「戦争と日常」に目がいった。
戦争をテーマとして扱う際は、爆心地や米軍を中心に描く手法が取られると思っていたが、本作はその固定観念を打ち砕いた。主に描かれているのは、爆心地から少し離れた主人公の嫁ぎ先での生活である。空襲、原爆の被害は受けたものの、広島や長崎ほど壊滅的な被害は受けていない。描写されているのは1900年代前期であるため、原爆投下というXデーが来ないことを願うばかりであった。
このような戦時下で、主人公達は日常を失っていく。米や砂糖の配給が減少していき、闇市で高値で買わなければならなくなる。空襲により心的ストレスが蓄積、外傷を負うことに。戦後の孤児の出現、米軍の存在などなど。しかし、主人公達は日常が失われつつある状況においても、必死に生にしがみついている。
普段の日常の幸福感を大事にしなければならないと、陳腐な感想で締める。
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