Maki

この世界の片隅にのMakiのネタバレレビュー・内容・結末

この世界の片隅に(2016年製作の映画)
4.9

このレビューはネタバレを含みます




公開の一週間後ぐらいかな
原作も監督も制作経緯もよく知らずに
飛び込みで観ました。

――――――――


時代は太平洋戦争末期。
舞台は広島・軍港の街:呉。
少女「すず」と周りのひとびとの
連なり関わりを描く。
 
冒頭。
やわらかくおだやかな情景。
おっとりと頼りなさそうな少女が
おつかいに出た街で迷子になり
首をかしげてぼーっと立つ
ただそれだけの姿に
心をごっそり持ってゆかれ。
これは凄いものを観ている!
となぜか確信。
 
そして
これでもかと徹底描出された街や野や海に
すずさんやみなの喜怒哀楽に 恋や嫉妬に
日常と異状のない混ぜに 根づく狂気に
空に散らばる轟音に 襲いかかる爆弾に
 
ゆくえの知れない…

もう逢えないひとに
もう描けない絵に
もう繋げない手に



すずさんたちと一緒に笑って一緒に悔やんで
何度も涙がこぼれてはぬぐいつづける二時間。

【この世界の片隅に】には違和感がないの。
怖いぐらい。これって一体なんなんだろう。
みんな「すずさんにまた逢いたい」と云う。
気恥ずかしいけどこの映画ならそう云える。
 

・ 
 
映画のあと
こうの史代の原作全三巻を
十回ほど読み返してから
ふたたび映画を観た。

漫画も映画もひとしく
触れる絵はいつもどこまでもやさしいのに
何度もカッと全身が熱くなり揺さぶられる。
 
漫画ならではのたいせつな物語も愛おしい。
映画ならではの色や音や息遣いも愛おしい。
 
送り手としての矜持が
作り手としての執念が
隙や枠外にあふれだす。

こうの史代氏も
片渕須直氏も
真の気狂いだと想う。

凄まじすぎると
やわらかくなる
 


・ 
Maki

Maki