ち

この世界の片隅にのちのレビュー・感想・評価

この世界の片隅に(2016年製作の映画)
4.7
ネット上での評価があまりに高かったので、だいぶハードルが上がってしまったな、と思いながら観たが、それを軽々を超えられてしまった。
前半はテンポが遅く、飽きてしまうかもと危惧していたが、気が付けば後半は身を乗り出して画面に釘付けにされていた。
能年玲奈の声も、最初は棒じゃんなどと思っていたが、これまた後半ですっかりひっくり返された。
映画において日常パートは、伏線だとか事件と事件のクッションの役割だったりするが、戦争が日常そのものに完全に組み込まれているので、むしろ日常こそが山場として感じられる、なんとも不思議な感覚の作品だった。
どんな悲劇も日常であり、一日という長い時間の中では人間の心理は一定ではない、だから笑ったりもするし怒ったり泣いたりもする、次の日にはそれが日常となっている…すずの嫁いでからの生活もそうだが、日常の強制力というやつに恐れをなしてしまう。
あとやっぱり我々は「昭和20年8月15日」に強い感情を持っており、日付が表示されるたびに引き算をしてしまうのだなと実感した。しかし、本作での当日の描写は…言われてみればこれも歴然とした日常、なのだと思い知らされた。
前半部、なんとなく、封建主義っていいなぁと感じてしまった。やることを多いけど、考えることは少なそう。
あと、ありとあらゆる音楽が良かった。EDまでの流れが完璧だった。
ち