おにぎり

この世界の片隅にのおにぎりのレビュー・感想・評価

この世界の片隅に(2016年製作の映画)
4.1
冒頭の囁くような歌声とのんさんの素朴な語り口。
自然と入ってくる前評判で内容を大体想像できていたので、お涙頂戴の準備をしているようなその演出があざとく見え、早々に期待外れと決めつけて斜めに見てしまっていました。
結果、あざといのは私の方でした。
評判に違わず本当に素晴らしい作品でした。

今作には日本人独特の物事の受け止め方、日本人特有の人間愛が絶妙に表現されていて、戦争中という残酷で悲しい状況にも関わらず、主人公すずを通して日本人の良いところが至る所に表現されています。
戦争の中心で戦った誰かではなく、ひとりの普通の女性の人生を淡々と描くことによって、ささやかな世界から見た戦争、イコール大多数の日本人の目線で戦争を見つめています。むしろその方が戦争がどういうものなのかリアルに伝わってくる事を実感しました。

「火垂るの墓」のような作品は2つは要らないし、同じアプローチでそれを超える作品は今後も無理であろうと思う。しかし今作のような切り口で、日本の戦争の歴史を次世代に語り継ぐに相応しいアニメ名作が、この世に送り出されたことに感銘を受けています。
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