ぬーたん

この世界の片隅にのぬーたんのレビュー・感想・評価

この世界の片隅に(2016年製作の映画)
3.6
単行本になった時に漫画既読。
高評価な漫画だったが、画もキャラもあまり魅力は感じなかった。
ドラマならともかく、これを映画化とは難しいだろうなあと思ったものの特に観たいと思わなかった。
原作漫画も大分忘れてしまっている。

とても不思議な映画だ。
戦争を描いてるというよりは、戦争当時のごく平凡な日常を描いている。
主人公も何処にでもいそうな普通の女の子で、嫁に行ってもあまり変わらず、のほほんとしたお人好しなキャラ。
義姉がちょっとツンケンしているが、後はみんな善人ばかり。
食料不足でも明るいし、ガツガツしていない。
空襲のシーンは割と多めではあるが、広島ではなく呉市が舞台なためか広島の原爆も直接的には描かれない。

呉にいて、原爆のキノコ雲を見るシーン。
ふと思い出したのは、亡き父のこと。
父は海軍兵学校のラストから2番目の76期生で、戦地に行くことはなく江田島で終戦を迎えた。
訓練中だったのか、江田島の海のボート上で、このキノコ雲を見たという。
その光景はずっと目に焼き付いていると言っていた。
何が何だか分からぬままに、数日後に終戦。
その時、悔しくてみんなで泣いた。と。
日本が負けるはずはないと信じていたのだ。
そして、広島の街中を通り東京に帰った。

戦争を直接的に描くのではなく、間接的な描き方で、じんわりとその悲惨さを描いていて、そのため余韻が残る。
この日は何回空襲があった、何時に解除。
何月何日、こんなこと。あんなこと。
それはそれで良いが、2時間を超える作品なだけに、中だるみ感は否めない。途中でちょっと飽きてしまった。
あ、そんなこと言うとファンに怒られそうだけど。

当時の風景、天気や空、艦船の忠実な再現など、監督のこだわりがあったそうだ。
確かに、昭和らしい商店や人々の様子など、丁寧だしノスタルジックな画である。

あの時反対側だったら…という後悔がラストで上手く繋がっている。
子供と歩く時に、車道側に自分が来るという親の気持ちになると、その気持ちがよくわかる。
しかし、自分の子供でなく血の繋がりもなく、それでもそう思えるかは、実際どうかなと思ったり。
善人じゃないからなあ、私は。
良い作品なんだろうけど、優しすぎて何処か入り込めなかったかな。
やっぱり、いいひと、でないからだわ💦
ぬーたん

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