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この世界の片隅にのmeのネタバレレビュー・内容・結末

この世界の片隅に(2016年製作の映画)
5.0

このレビューはネタバレを含みます

予備知識なく鑑賞。
主人公すずの、あまりの天然(ボケ)に口がポカーンとなりながら見始めた。


道に迷い 毛むくじゃらの大男に捕獲され 人さらいにあったり、お金がないので1センチにも満たない長さの鉛筆を使っていたり、屋根裏から知らない女の子が出てきてスイカの皮かじってたり、突然嫁にもらわれたり…

開始早々で なんかいろんなすごいことがどんどん起きるのに、夢なのか現実なのかよくわからないな〜って言いながら いつもボケ〜っとしてる主人公。

絵を描くのが好きで、空想癖があって…

おいおいまじか。大丈夫?!しっかりして?!って観てるこっちが焦って、目が離せなくなった。(作品に引き込まれたとも言える)


ずいぶんまったりしたアニメだなぁと思いつつ…
でもそれはすずの性格や喋り方が(画風も含め)そうさせるのであって
その当時の暮らしぶりは戦前戦後どちらにしても 今では考えられないくらい貧しく、心身共に堪えることばかり。

現代っ子の私からしたら、よくこれでヘラヘラ笑ってられるなぁというのが正直なところ。

みんながみんな、貧しさが当たり前の生活でそれが日常だから、その中で楽しさも普通に感じられてるという…


すずだけじゃなくて、なんというか国民全体に漂うのほほんとした雰囲気を節々に感じた。
これがお国柄というやつなのでしょうか。

これは戦争に向けて都合のいいよう作為的につくられたムードなのか、生まれながらの日本人の気質なのかは わからないけど…

どんなに酷いことがあっても我慢して笑えたり、たとえ笑えないことでも淡々と受け流すというか…


原爆が落とされた後も、情報不足だから逆にこんなに落ち着いていられるのかもと思ったり…

普通に原爆が落ちた場所を行き来していて恐ろしかった。

今後の身体への影響を含めいろいろなことを、人々は何も知らなかったのでしょう。(知らされていなかった?)
知らないからこそ、被爆者に「きっと治るよ、治らないとおかしい」なんて言える。

もし、知っていたとしても何もできないし無知でいる方がいくらかマシだった部分もあったのかも…


後半の方で、血生臭い出来事に対して すずが壊れていきそうになるのを観て
ああ、やっとリアルな部分が見えてきた…ような気がしました。

何も良いことなんてないのに、「○○でよかった(不幸中の幸い)」と言う言葉で片付けられる数々の重々しい出来事。

当たり前に心も病みます。それが普通です。

結局、塞ぎ込んでるところに妹が会いに来て着物やビワをもらい、ガールズトークしたりして、立ち直るの早!?って思いましたが…(尺の関係もあるかな)




「泣いてたらもったいない……塩分が!」というセリフ。
時間が!または人生が!って言うのかと思ったら塩分ときたか〜って感じでした。
(調味料の配給が少ないが故の名台詞)


うろ覚えですが、
「のんびりした自分のまま死にたかったよ」
「普通で安心する。お前だけはどうかいつも普通でいてくれ」

というような、他にもこの時代故のハッとさせられるセリフがいくつかあり、心に残りました。


やり場のない怒りを感じながらも、ひたむきに生き抜く姿は神がかっていて、
「恐ろしいほどメンタル強すぎ!!!」
このアニメを表すならこの一言に尽きます。


戦争をこんなふうな切り口で描いている作品を観たことがなかったのでとても新鮮でした。

なんとな〜く観始めましたが、ちょうど2月に広島へ旅行し原爆ドームや資料館を見学したこともあり、とてもタイムリーな映画でした。
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