NonCorleone

この世界の片隅にのNonCorleoneのレビュー・感想・評価

この世界の片隅に(2016年製作の映画)
4.9
この映画と出会えて本当に良かった。

中学二年生のとき、父に公開2日目に半ば無理やりテアトル新宿まで観に行かされたことからだった。僕は君の名は。が観たかったのに。父が観たかった理由は、内容というよりかは女優の のん の為だった。
「のんちゃんが久しぶりにでる映画が爆死したらかわいそうだ!」
と言われ渋々行ったのだ。だから期待なんかしていなかった。ほぼほぼ、のんちゃんへの所謂お情けのつもりでテアトル新宿へ向かった。観る前ポスターやYahooレビューを見ている時も、火垂るの墓やはだしのゲンの二番煎じで、よくある反戦映画だと思っていた。

全く違った。衝撃的だった。

観終わったあと、僕と父はずっと無言だった。感想が全く言葉にならなかった。こんなに映画というものが心にくるとは。僕には初めての経験だった。
それから僕は、すずさんがまだ生きていて、どこかで生活してるんじゃないだろうかと錯覚し始めてきていた。授業中も、帰りのバスも、横を向いたら、すずさんが廊下や街を歩いてるんじゃないかと思ってた。この世界の片隅に は僕の世界観の一部になっていた。

この映画は戦争映画であるが、日本人の暖かみが、優しさがある。戦時中であっても彼女たちは僕たちと同じ日本人だ。根本的な部分は変わらない。日本人らしい生活や日本らしい風景がこの映画にはある。でもその日常に垣間見える戦争がある。日本人らしい生活と風景は戦争に犯されていく。そのギャップがこの映画の凄いところだ。

僕はこの映画を観て、泣いたことは無い。泣くなんていう単純なことでは紛らわし切れない感情が渦巻くんだ。もちろんこの映画を観て涙を流す人沢山いる。でも、その涙は悲しいからでも、戦争が恐ろしいからでもない。きっと戦争が終わって。日本の夜が、明かりが灯る夜に戻ったこと。九嶺の街に希望という光が溢れていることに対する涙だ。

すずさんたちが戦争を生き抜いて、成長していく日本を生きることが出来て良かった。そして、今を生きている自分が戦争とは無縁の暮らしをしていて、本当に誇らしい。心の底からうれしい。

今まで5回映画館で観て来たけど、もう一度いや何度でもこの映画を映画館で観たい。そしてみんなにこの映画を知ってもらいたい。
さらにいくつもの とても楽しみに待っています。上映日に父とテアトル新宿でまた観たい。

あなたにはこの世界、どんな風に見えますか。
NonCorleone

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