ギルド

この世界の片隅にのギルドのレビュー・感想・評価

この世界の片隅に(2016年製作の映画)
4.1
戦争映画だけれども戦争映画らしくない小さな幸せと温かさが沁みるところが良かったです。
もちろん舞台が舞台なので凄まじいシーンや惨いシーンはあるけれども、戦争の善悪を問うのではなく戦争を通じた悲劇とそれに抗う人間の力強さを魅せる姿で感傷的になったかな。

 戦争という劇的な変化を通じてすずが力強く生きるのに、人と人との繋がり/助け合いで日々を乗り越える姿をのほほんとした雰囲気で伝えていて、火垂るの墓のような重苦しさがないのは新鮮でした!
加えて年月が経つにつれて戦争が激化する下りで、一般の人からすると遠い存在の戦争が近づき翻弄される恐ろしさはあれどもメッセージの押し付けがましくなくて、そこも好きです!
人々の生活を映すシーンがメインで全体的に単調に進むものの、ストーリーと画の同期づけがあったし常に動き回る描写と独特のタッチを含めて見応えがあったかな。

 作画も独特で、絵描きのタッチがすずのキャラクター描写や感情変化・現実と夢の相違に上手く反映されていてそこも良かったです!特に序盤の水原君へすずが絵を描くシーンでの背景の変化、中盤くらいにある絵描きのタッチと奥行きある構造、走馬燈のシーンが好きです。

 そんな映画の中で微かに伝える日々の出会いと繋がりの感謝にこそ、ポスターに書かれた「100年先にも伝えたい」部分だと感じました。正直なところ、戦争の恐ろしさはどうしても客観的に受け取りがちになってしまいます…。だけれども戦争の悪の部分を敢えて伝えずに日本と外国から一歩引いた人間と人間の繋がりに焦点を当てた部分が魅力的な一作でオススメです!
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