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ミスター・ダイナマイト ファンクの帝王ジェームス・ブラウンのkaomatsuのレビュー・感想・評価

4.0
ファンクの帝王、ジェームズ・ブラウンの生涯を追った、怒濤のドキュメンタリー映画。

過去、バンドでギターを弾いていた私は、今や前人未到の領域をゆく孤高のギタリスト、ジェフ・ベックを勝手に師と仰ぎ、その職人気質の技やセンスを盗もうなどという、実に無謀なことにチャレンジしていた。そのジェフ・ベックがリスペクトするアーティストとして、雑誌のインタビューで何度か名を挙げていたアーティストの一人がジェームズ・ブラウンで、師がリスペクトするその男とは如何に…と、聴き始めたのがきっかけだった。ブルースやソウルをルーツに持ちながらも、圧倒的なグルーヴとエネルギーを放つその歌とパフォーマンスに、ほぼ瞬殺状態だった。それ以来、ジェームズ・ブラウンを中心にソウルやファンクを聴き始めてから長い。

1950年代にソウル・シンガーとしてデビューしながらも、北のモータウンやフィラデルフィア・ソウルよりは攻撃的で、かといってサザン・ソウルの田舎臭さは微塵もない、エキセントリックなシャウトと唯一無二のダンスでメキメキと頭角を現し、60年代にはファンクと呼ばれる16ビートのストイックなダンス・ビートを生み出すことになる。スーツにネクタイ、革靴でビシッと決めた初期のファッションは、白人中心のショービズ界でやっていくための、自身のプライドの証だったという。常にバンドの絶対君主として君臨し、メンバーにはリズムの強化を図るため、演奏のミスに対しては罰金制にしたり、大勢をクビにしたりと、パットン将軍顔負けの暴君ぶり。そのせいで、メンバーからストライキを喰らう羽目となり、バンド内で労使闘争にまで発展したというのがすごい。また70年代、当時の大統領ニクソンと親密になることで、黒人の権利や自身のミュージシャンとしてのステイタスを上げようとした挙げ句、逆にニクソンに政治利用されたりと、輝かしい栄光だけでなく、失敗や挫折、自身のコンプレックスなどについても詳しく触れていて、けっこう成金オヤジ的な側面も覗かせて興味深い。

この映画をプロデュースし、いかにジェームズ・ブラウンに影響されたかを嬉しそうに語るミック・ジャガーが印象的。ミックをはじめ、マイケル・ジャクソンやプリンス、レニー・クラビッツらが活躍できる土壌を作った、その功績はあまりにも偉大だが、その事実を再確認して余りある、珠玉の音楽ドキュメントだ。
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