ユカリーヌ

湯を沸かすほどの熱い愛のユカリーヌのレビュー・感想・評価

湯を沸かすほどの熱い愛(2016年製作の映画)
4.8
【過去に観た映画】2017.1.12

とてもよかった。
泣けて泣けて、心にしみいった。
そして、切ない。
    
「死にゆく母の熱い想い」というテーマだが、ただの余命宣告もののお涙ちょうだいモノとは
違い、母の病を軸にして、登場人物各々の問題をうまくからめていた。
   
細かい伏線をはくめぐらせ、それがきちんと回収され、つながっていくシナリオはお見事!
色とか小物とか、きちんとリンクさせていて、細かい所まで行き届いているのも感心。
   

盛り込み過ぎると何が言いたいかわからなくなる
ことが多いが、この映画は全くブレていない。
   
男性監督だと「女」や「母性」というのを理想的に描きずきることがあるが、この監督は、聖母ではない強さも見せている。
後でパンフを読むと「太陽の明るさと月の寂しさをあわせもつ人」というキャラ設定をしたとあった。
   

オダギリジョーのダメ夫ぶりはゆるいがおもしろいし、
まあ、何をやってもかっこいいからねえ。
たぶん女性が描くともっとダメ男ぶりが強調されるだろう
なあ。
   

それと女性性が抑えられているからドロドロ感が全くない。
宮沢りえの演技が高く評価されていてるし、やつれていく様の肉体のストイックな作りこみも
かなりの女優魂を感じたが、
子役の女の子の演技力がすごい。
   
 
視線の落とし方、憂いの表情、
どのシーンも惹きつけられ、
子役というより女優そのもの。
しかし、この監督さん、子役や若い女優さんに大胆なことやらせるよねえ。
それを見事に持ち味にしてた。
  

「衝撃的ラスト」は想像通りだったけど、素敵な演出で、きれいに撮っていて、うまいなあ。

泣き所がいくつもあり、それがわざとらしくなく、どんどんその波が高まっていき、
気持ちが入り込んで行く。
  
亡くなったりりィさんも出演されていたけど、
このシーンは一番泣けたかも。
   
 
食卓シーンが多いけど、これも意味合いを持っていて、
うまく心情を重ねていた。

最近、虐待やネグレクトのニュースが多く、いたましく思うだけに、この映画では
家族のつながり、想いというものを深く考えさせられた。

観終わったら、語りたくなる映画。
一人で余韻を引きずるのもいいけど、誰かと映画を語るのも素敵な時間。

種をまくだけの男には、大地の深さは理解できないのかもしれないけど、男であれ女であれ、愛という水をやり続ければ、
花を咲かせることはできるのだ。
   
パンフにシナリオが掲載されているのがうれしい。
ユカリーヌ

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