てつ

湯を沸かすほどの熱い愛のてつのレビュー・感想・評価

湯を沸かすほどの熱い愛(2016年製作の映画)
4.4
宮沢りえの熱演が凄すぎた。
家族愛。とにかくこれに尽きる。
母の視点から、あすみ(杉咲花)にとっていちばん最適な選択をして全力でかかわる。嫌われ役にもなれる。その結果、大切なことを学び取り、強くなって帰ってきたあすみの表情は、これこそ我々が観たかった姿なのだと思わせる。
最初の頃のシーンで蟹を食べる様子が描かれる。これも大事な伏線となっている。
それは、後半で母と娘たちの旅行に出かけた際に明らかになる。
ここまでとても誠実で強い母の姿を見せられてきた我々は、料理を配膳する(おそらく喋れないと見られる)女性に、いきなりビンタをかますところから、えっ!?と驚かれされる。これは絶対何かあるな、と思う。その答えはすぐに明らかになり、母の口から娘へ説明されるのだ。
芝居の中で状況を把握させる見せ方も秀逸だし、何か事件が起こる度に胸が締め付けられる。
母の強い愛は、たまたま通りすがったヒッチハイクの青年をも巻き込むのだ。
そしてラスト。訪れる結末は覆らない。奇跡は起こらない。だけど、私たちはお互いに、思いを伝え合うことができることを知る。あのピラミッドは、そのときできる最大限の愛の表現だったと思う。
人は、それぞれ思いの強さをもらった分だけ、その人に向けて返そうとするのだろう。そんな家族愛の素晴らしさを見せつけてくれた。
また一つ名作を見つけた。

補足。
あすみが実は手話ができる、ということを、前半のどこかでさりげなく描いてほしかった。後半のあの重要なシーンでいきなり手話を使い出したので、とって付けたような感じが残った。
→これについては指摘をいただいた。
ちゃんと描かれている。ただ、自分がそのシーンを見逃していたか、印象に薄くスルーしてしまったため後半で驚きをもってしまった。やはり映画は集中して観たいものだ。

補足2。
途中、たしかあすみを映すシーンだったと思うけど、手カメラで細かくブレた映像だった。通常、撮影機は台に固定してブレないように撮るので、おそらくこれはわざとそうしたんだろうと思う。登場人物の繊細な心の動きを手カメラで表現していて(やるな…!)と思った。細かいところだけどしっかり伝わる。
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