泣けた。
お母さんの愛情もすごいけど、自分が本当にすごいと思ったのは、娘さん。
娘さんの勇気、あれはほとんどの人には出したくても出せないと思う。
お母さんの支えや愛情あればこそ、とは思うけど、見事だった。
あの勇気をこんなに克明に描ききったという点で、この作品はただの感動作にとどまらない作品になったと思う。
陰湿で一方的な排他的圧力は、特に未熟な人の集団において、今も日々繰り返されている。
一部の人が、どうでもいいわずかな優越感のために誰かを一方的に傷つけるのが、どれほど卑劣なことか。それがわからない未熟さが、まだまだ世間には溢れている。
でもこの映画を見たら、やられた側がただ「ふつうであること、無事であること」を手にするためだけに、どれほどの勇気を絞り出す必要があるのかが、誰にでも分かる。
マンガ「3月のライオン」でもこのあたりのことは克明に描写されているが、子供たちがそういうことを学習する機会が乏しいという現状は、やるせないことだ。
「あいつは自分達と違うから迫害してもいい」という考えや感覚は、非常に一方的で偏見に満ちているという点で、ナチスがユダヤ人に向けたものと同種だ。
組織的なイジメはただその規模を小さくしただけで、質としては同じことを行っている。
ただ、そんなことを教育現場で教師が唱えても虚しく響くだけだろうから、こういう映画や3月のライオンのような、文化的ヒット作における「エモーショナルな表現、解説」が私たちには必要なんだろうと思う。
そういう意味で、映画にしかできない重要な役割を果たした作品だと思う。
宮沢りえ、オダギリジョー、若い俳優たち、みんな素晴らしい。人としての心の強さとは何か、勇気と愛情を伝えてくれる傑作。
2019年春、BSで放映があって二度目を観た。やはり素晴らしい映画だった。
ちなみにこの映画、フィルマで初レビューを書いた作品です。観たあと必ず誰かと話したくなるような、心揺さぶられる作品。