JIZE

ピッチ・パーフェクト ラストステージのJIZEのレビュー・感想・評価

3.9
大学のアカペラ部"バーデン・ベラーズ"が世界制覇を果たしバーデン大学を卒業したその後を舞台にそれぞれが理想と現実を痛感しながらも社会人アカペラ部として再結成する様を描いたシリーズ第3弾の青春ミュージカル映画‼︎まず冒頭の夜のフランスの沖合に浮かぶ観光船の船内でベラーズの面々がいきなり素早いフォーメーションダンスで激しめの楽曲「Toxic」を名調子で踊る描写から続いて捨て身の爆破アクションに連なるシークエンスは彼女たちの歌唱と踊りを一挙に堪能でき惹き込まれる導入部だった。いわゆる今回で有終の美を飾る最終章となる。それぞれの卒業後が暗示されこれまでの本舞台となるスクールを飛び出した観光映画としても機能するワールド感があった。また前作『ピッチ・パーフェクト2(2015年)』で世界最高王者としての称号を得たベラーズの面々が社会の複雑な壁に直面しながらも仲間との再会に歓喜し再結成するという同窓会的に祝杯を上げながらも新たな強敵グループと立ちはだかる難題を前にベラーズの持ち前である"努力と直向きさ"を糧に目の前の問題へ身を投じる。簡潔にまとめれば歌唱描写は前2作に引けを取らないほど魅せ方が研磨され満足な好演だったが肝心のシナリオが本質に結び付いてない印象を覚えてしまった。つまり後半のC4爆弾をめぐるサスペンス風な誘拐事件がやや本ルートで描かれ続ける欧州の米軍基地慰問ツアーでの異種格闘技的なアカペラ合戦と整合性が取れておらず脱線してる。またアナ・ケンドリック演じる主人公ベッカのソロでトップに登り詰めレーベルの契約を巡るパートも浅すぎたように感じました。

→総評(勝敗を忘れ歌を楽しむベラーズ軍団の絆)。
総じて歌唱描写は前2作に引き続き最終章でも完璧でした。特に中盤の"リフオフ"でルビー・ローズ演じる敵陣のバンドリーダーと白熱するVS展開は面白かった。主に道具を使わず口だけで対決するベラーズと楽器を使って応戦するバンドチームの正反対な感じも面白い。またこのシリーズの魅力を一言で要約すれば"話し言葉に含みを持たせたガールズトーク(ぎゃぐ)の台詞の応酬"だと思う。特に今回ほぼ主役級に出番を買って出ていたと云える太っちょエイミーの強烈なボディとその饒舌口調はシナリオを是が非でもを木っ端微塵にねじ伏せる圧倒的な重圧感がある。太っちょエイミーが登場するくだりは全描写でカオス的な雰囲気が漂っていた。また劇中一番笑えたのが中盤,せまい部屋中に大量の蜂が充満する悪夢感をぜひ味わってもらいたい。作品の苦言を云えば本ルートの実力者たちが集うアカペラパートだけを余計な誘拐事件やエイミーの父親?との薄っぺらな家系問題を抜きに観戦したかった印象を受ける。というようベラーズの面々が大学を卒業しそれぞれが別の道に進むけどそれは永遠の仲間で孤独じゃない事へのポジティブ愛に最終章ながら同窓会感を織り込みつつ満ち溢れていたように感じます。恐らく締め方的にも第4弾は製作される気がした。個人的に今回でもベラーズの面々ないしベッカ単独が歌唱する「Cups」の再録verに期待しましたが…という感じでした。過去2作のシリーズ信者や作風の持ち味のアカペラに興味がある人には無条件でお勧めします。
JIZE

JIZE