片住

小さな唇の片住のネタバレレビュー・内容・結末

小さな唇(1978年製作の映画)
2.0

このレビューはネタバレを含みます

コケティッシュな少女に翻弄される作家男性の物語。
美しい衣装に着替えるのを待つ中鏡に写る裸体を眺めたり、入浴中の彼女を見つめたり……始めはエヴァの方が見つめる主体であったが、彼女は見つめられる側に反転する。叔父叔母の家に引き取られ、外出している描写もなく、ずっと家の中でドレスを纏い貴婦人ごっこをしていたエヴァ。彼女を外の世界に連れ出し、人前で着飾る快楽を教えたのはポールなのに……皮肉なものだ。
初めて白昼堂々と白いドレスを纏いブランコを漕ぐエヴァとそれを撮るポールの図は、その後繰り返されるエヴァの肢体の魅力に翻弄されるポールの様子も相まって、フラゴナールの『ブランコ』を彷彿とさせた(押している中年男性はいないが)。
DVDケースには「ナボコフの『ロリータ』をオーストリア美しい自然を背景に再現した」とあるが、ハンバート・ハンバートとは異なり1度も彼女と思いを遂げることなく終わってしまう。
彼女に救われたと語ったからこそ、彼女に想いが届かずあの結末を選んでしまったのだろう……。
ポールが作家であるためか『若きウェルテルの悩み』を思わせるラストシーンだった。

音楽はところどころ(どうしてこのシーンにこれなのか?)と疑問に思ってしまうセレクト。特典映像と本編が切り離されてしまい、本来持つこの映画の魅力が薄れてしまっているように感じる……。
片住

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