すぎえ

ハッピーアワーのすぎえのレビュー・感想・評価

ハッピーアワー(2015年製作の映画)
4.8
映画は現実ではない世界に連れて行ってくれると言うけれど、
この作品は現実から現実に連れて行かれるのです。

映画だけど映画じゃない。
気付いたら取り込まれて、役者達と同じ息遣いをしている。
第三者目線の登場人物として私がいる。

「生きていく上でなるべく起きて欲しくない出来事」が主人公の女性4人には降りかかっていきます。

息子の不祥事。
浮気。
離婚裁判で泥沼化。
うわ不幸だなぁと思わず口から漏れてしまうような事ばかり。

彼女たちは傷ついていきます。
心底疲れ切ってしまうような出来事ばかりですよ
けれどその状態に彼女達は気付いていない、気付いても心のケアの方法が不器用。

唐突ですが、カサブタを思い浮かべてみてくださいね

怪我をすると、その患部には必ずかさぶたが出来ますよね
靴ズレのように何度も同じ場所が傷つくと、次第に皮膚は厚さを増し頑丈になる。

心も肉体と同じで傷つくとかさぶたのような何かで覆われ、次第に痛みへの感覚が鈍くなる。
それは強くなるという事かもしれないけれど、些細な傷に気が付かなくなってしまう事でもある。

カサブタの数は年齢の数とは比例しないでしょう

現実に生きる人々も映画の彼女たちと同じく自分達の些細な傷に気が付いていないだけで
全員カサブタが体に張り付いているように思えませんか

4人の女性達は、後半にいくにつれ
自らのカサブタを剥がしていきます。
剥がす事もまた強さ、些細な幸せ・喜びをないがしろにしなければ、カサブタを剥がしても怖くないと私の目には映ります。


幸せが目立つように作られたシーンは少ないですがその分些細な癒し・喜びが浮き出て見え、最後には
『ハッピーアワー』
という題が身にしみるほど、自分の中に小さな幸せが積み重なっていた事に気づくのです。