良かったシーンなんて、選んでいたら疲れてしまう。全てがさんざめいてみえた。お世話様でした。と言いたい。
何が嘘で、何が本当で、何が良くて、何が悪くて、そういうものを全部取っ払ったときに、みえてくるものが沢山あった映画だった。すごく健やかな映画。俺は健やかな映画が凄く好きなんだなあ、と思わされた。自分の好きな映画ってなんなんやろ、ってずっと思ってきたけど、少し自分の中で答えが出た気がする。俺は、健やかな映画が好き。
何より、女性陣の声がいい。なんでそんな声がお芝居で出るんやろ、と。とても興味深かった。人が人を静かにずらすような声が沢山あった。そんなお芝居がいっぱいある。
いわゆる単調なお芝居に埋もれている役者と、そうでない役者はいてしまったものの、前者が映画を引っ張ってくれててよかった。5時間を越える映画を、そういう声たちが映画の中へ連れてってくれた。
やはり、濱口映画は女の人って凄いなあと思わされる。女性への尊敬と憧れを自分はすごく感じる。「女性的」という部分をこんなにも助長させてくれるのは、凄く自分の思うものと涼しげにマッチさせてくれる。
あまり観てはいないのだが、黒澤明より小津安二郎の方が好きだ。だから、濱口竜介は好きなんだという、しみったれた弱い理論が自分の中に生まれる。
何度か眠らされてしまったが、「寝ても覚めても」5時間と少し、この映画の中にはずっと自分は居た。
フォークやボサノバを聴いてる感じに近い。自分はすごく、この映画が好きだ。