ちろる

パッセンジャーのちろるのレビュー・感想・評価

パッセンジャー(2016年製作の映画)
3.7
SFアクションというよりはヒューマンストーリー寄りなのでSF特有の小難しいことはなく、圧倒的なスケールの映像やBGMでテンポ良く引き込まれるエンターテイメント作品でした。

近未来の地球から遠く離れた惑星に向かう120年間の冬眠の途中、なぜか自分だけ90年も早く目を覚ましてしまった主人公ジム。
とてつもなく広い宇宙船の中は快適なシステムが整って、基本的な生活は不自由なくできる状態だとして、自分だったらどうするか?

私は女なのでオーロラの立場として考えてしまうけど、もし目を覚まして唯一の起きてる人間がもし生理的に無理な異性で、しかも自分が目覚めた本当の秘密を知ってしまったのならば、きっと私はとち狂ってしまいそう。
この場合は相手のジム(クリス プラット)がたまたまイケメンの技術者というのはなかなかのファンタジーなので、ちょっとご都合主義な感じにしか見えない。
(そういう意味では同じく宇宙の孤独を描いた「ゼロ グラビティ」の方がリアルでホラー指数は高いです。)

人は希望する人生を送れないと知った時、悲観して自分が不幸だと嘆いたりその状況を打破することだけを考えるけど、与えられた環境の中で最大限楽しむこともまた人間だからできる応用力。

宇宙船で唯一生きる事になった男女2人で生活する中で、育っていくラブロマンスだけでなく、自己の不安感への対峙やお互いの不信感、生きるための数々の決断などもあり、世界でたった2人だけ残された時、人はどんな風に進むのかをまるで神様に試されてる、未来のアダムとイブのような存在として描かれています。

宇宙船で愛を育んだジムとオーロラより、壊れかけた2人の絆を繋ぐためにだけに登場したようなガスの存在意義を考えちゃうとちょっと切ないし、オーロラの事を考えちゃうとラストの決断もなんだかリアルではない気がしたけど、まぁそんなこんなでいろんな事を追考できて楽しめたし、前半のジムの孤独の恐怖体験と、後半の2人が宇宙船の危機に対峙する緊張感は大画面スクリーンでこそ味わえたので最終的には大満足。

この作品は映画館に何人かで行って自分ならどうするか意見かわしたりできるので、仲間で見る映画としては、観に行って損はない作品だと思います。
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