鹿江光

スパイダーマン:ホームカミングの鹿江光のレビュー・感想・評価

4.2
≪85点≫:ヒーローになるための覚悟。
シリアスだった『シビル・ウォー』からは打って変わって、とってもコミカルで心癒されたスパイダーマン。でも真剣なシーンはとことん熱く、一瞬スパイダーマンであることを忘れるほどのサスペンスフルな雰囲気も漂ってくる。バランスの取れたマーベル作品だ。
ご近所パトロールマンがどうやって世界を守るヒーローと成っていくか…。本作はスパイダーマンとしてもそうだが、ピーター・パーカーとしての成長も大きく感じられ、ひとりの青年が“覚悟”を知り、ひとりの男へと進化していく姿に心打たる。“大いなる責任”を知るのは、もう少し先かな?
スタークは良い師匠感を醸し出し、言葉と行動に威厳が伴っている。出しゃばり過ぎず、必要な時にしっかり決めてくれる、超頼れるリーダーといった感じ。あれが協調性ゼロのスタークか…と思うほど笑。シビル・ウォー大変だったね。
ヴァルチャーも念願の映画デビュー。マイケル・キートンが演じているところがなんだかむず痒い。コウモリ男が鳥人間に。地位や能力・権力は違えど、やってることは昔のスタークとなんら変わりないってのが複雑で、なんとも言えない。どこか狂った世界で、初めて普通の人間にスポットが当たった瞬間ではないだろうか。普通の人間だっていとも容易くヴィランになれる。ヒーローの活躍の裏というか闇に潜む、“普通”という脅威。その行き場のない怒りがヴァルチャーといっても過言ではない。
ピーターを取り囲むキャラもすごく魅力的。“椅子の男”はコミカルなスパイダーマンにはお似合いのサイドキックだ。勝手にスーツを着ちゃうあたりも、「自分がスパイダーマンの友人だったらやるよなぁ」ってことをやってくれる辺り、観客の心に一番近い。メイおばさんは歴代の中でも一番エロい。マリサ・トメイの前衛的熟女っぷりはなかなか素晴らしい。
とにもかくにも歴代で一番若いピーター。若さゆえの人間ドラマが面白く、必死に大人の、そして壮大な世界の一員になろうとする姿が可愛くも、感動を呼ぶ。後半のあのシーンは特にぐっと来た。他の観客がいなかったら「スパイダーマン!がんばれ!ピーター!がんばれ!」と応援しているところだ。プリキュアと同じである。
あとは冒頭、お決まりのマーベルのロゴシーン。超感動。鳥肌立った。さすがファンの心を分かっている制作サイド。
あとあとスーツの多機能加減が凄い!スパイダーマンって、ただ糸出すだけじゃないんだね!笑…即死モードの目付きが超カッコいい。そしてヒロインはカレンで良いと思う。ちゃんと最初のスーツも出してくれるし、やっぱり最後にはお待ちかねのスーツも登場。着るのは次回かな。
エンディングまでコミカルさは続き、みんな大好きあのお方が登場で、幕を閉じる。このコミカルな世界から、一気に絶望感あふれる『インフィニティ・ウォー』へ…。この落差、大丈夫か、ピーター。心はさながら保護者のよう。
鹿江光

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