kou

スパイダーマン:ホームカミングのkouのレビュー・感想・評価

4.0
《親愛なる隣人》
親愛なる隣人、スパイダーマンが帰ってきた。MCUの最新作にして、スパイダーマンの新しいシリーズの1作目。サム・ライミ、マーク・ウェブ版からジョン・ワッツを監督にし、トム・ホランドをピーター・パーカーとして新しいスパイダーマンを作り上げた。正直最近のMCUの中でもかなり面白い出来だったと思う。スパイダーマンの新たな幕開けに心躍る内容だった。

この映画が素晴らしいのは、勿論アクションや、スパイダーマンの造形、ガジェット等にもあるのだけれど、それ以上に、ヒーローとは何か、高校生の視点を持って描いたことだろう。最近のマーベルを含めアメコミ映画が、とてもスケールが大きくなりすぎて、もはや他人事。勿論フィクションには違いないのだが、身の回りと明らかにかけ離れている。どうしてもそんな流れにノレずにいたのだが、コンパクトな、青春映画に今作は仕上がっている。

そんな今作のピーター・パーカーは高校生としてクラブに入り、恋愛をし、友人とつるむ。そこにはヒーローとしての生活と、高校生としての生活が分けて存在しているのだ。彼が普通に人助けをするという部分は、最近のアメコミでは殆ど描かれなくなっているが、重要だと思う。ちゃんとした善としてのヒーローというのを描く必要があった。

しかし、そんな彼の日々にある決断をしなければならない時が来る。本作でとてもいいシーンでもあるのだが、敵であるヴァルチャーと戦うことが高校生としての生活に入り込んでくるのだ。

そこで彼はヒーローになる。とても感動的なのは、それは決してスーツの力、ではなく、彼自身の意志によるものというところに注目したい。とてもシンプルであるが、やはりヒーロー、そして等身大であるヒーローの姿というのに感動させられるのだ。

また、ラストの展開もとても味わい深い。アイアンマンのトニー・スタークとヴァルチャーのトゥームスという、今作には2人の父親的な存在が出てくるのだが、その2人の父親から彼はしっかりと学ぶのだ。そして親愛なる隣人となる。僕等の待っていたスパイダーマンは確かに戻ってきた。とても風通し良く、青春映画の体裁を持って。
kou

kou