ゆず

スパイダーマン:ホームカミングのゆずのレビュー・感想・評価

4.5
力の抜け具合が最高に丁度良い新生スパイダーマン。とても楽しかった。
スパイダーマン作品はサム・ライミ版三部作と「アメイジング」二部作をこれまで見てきて、今度はMCUに加入ということで果たしてどうなるかと思っていたけど、まさかこれまでで一番明るく楽しいスパイダーマンになるとは。ベンおじさん事件を省略したことでいつもの悲しいオリジンのシーンもなく、フットワーク軽く映画が始まるのも良い。
MCU作品としても、「ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー」でもないのにけっこうコメディよりの作品になっていて、終始笑わせてもらった。
思っていたよりもがっつりMCUで、アイアンマンなしには語れないくらいの設定は賛否あるかもしれないが、その設定を最大限ネタとして昇華していたので個人的には楽しめた。

ベンおじさんの代わりにアイアンマンのスタークさんやお抱え運転手のハッピーさん(本作では秘書のような活動ぶり)といった「おじさん」たちがピーターの周りにいて、彼を見守ってくれているのがいいね。
そしてマイケル・キートン演じるトゥームスも、ピーターがスパイディでなくてトゥームスがヴァルチャーでなかったならば、良い関係を結べていたはずと考えると少しせつない。トゥームスは犯罪者ではあるが部下への面倒見の良さも垣間見え、好人物と見ることもできる。
そんな優しいおじさんや厳しいおじさんたちの思惑を超えてピーターが立ち上がるシーンは、これまでのオリジンと形は違えどこれもまさしくヒーローのオリジンであり、もしかしたらこれまでよりも先を描いているのかもしれない。

両親がおらず伯母と暮らしているピーターにとって、「おじさん」というのは父性の象徴でもあるんだと思う。
前の2つのシリーズではどちらもベンおじさんが重要な役割を演じるし、さらにベンおじさん抜きでも親友の父親やガールフレンドの父親といった人々がピーターに深く関わってくる。
少年がヒーローとなり社会と関わっていくなかで、おじさん世代の大人たちとも付き合うことになるのは必然かもしれないが、ことスパイダーマンという作品においては、ただのおじさんにも「父性の代替」という深い意味が込められているような気がする。
若くて青いピーター・パーカーを通していろんなおじさんが描かれるスパイダーマン作品は、おじさんに萌える映画といっても過言じゃない。本作「ホームカミング」は特にそう思う。



8/14 スパイダーマン ホームカミング IMAX3D字幕 @TOHOシネマズ仙台
ゆず

ゆず