もるがな

スパイダーマン:ホームカミングのもるがなのレビュー・感想・評価

3.9
スパイダーマンとして見た場合、映画単体の完成度ではサム・ライミ版に軍配が上がるが、本作はアメージング・スパイダーマンの青春要素をさらに推し進めた、ピーター・パーカーの思春期冒険譚と言ってもいい内容である。驚いたのはヒーローになる動機、すなわち導入部分そのものを大胆にカットしたことだろう。アベンジャーズというヒーローが普通に存在する世界線ならではの思い切った選択である。また摩天楼という場所に対するこだわりを捨てたのもかなり冒険した印象が強い。

再リブート作ではあるが、今までと比べてホームカミングのスパイディは色々と幼い。高ぶりまくった承認欲求はガキそのものだし、能力の練度も低く、加えて高層ビルという地形依存であるため、それ以外の場所では色々と覚束ない。全体的に能力に振り回されている印象が強く、それはやや好みが分かれる所。そのためウリの一つであるバトルアクションも前作と比べれば今作は大きく劣ってしまう。ラストバトルもインパクトが薄い。

全体的に浮ついた雰囲気ながらも、学園コメディとしては一級品で、技術の進歩は如実に感じる。特に新スーツのワクワク感とハイテクさは一気に童心に返るレベルであり、スパイディの高揚感をダイレクトに味わうことができる。

話は意外性があったのはかなり好感触で、業を背負うかどうかの瀬戸際に追い込まれながらも、明るいトーンのまま終わったのは凄く良かった。ラストに主人公が出した答えも素晴らしく、自縄自縛な強大国アメリカ、それを背負うヒーローという重苦しいトーンになりがちな他のヒーローとは距離を置いた、等身大のスパイディにしかなれないヒーロー像である。個人的には欺瞞のある他のヒーローよりこちらのほうがよほどヒーローらしい。青い理想論かもしれないが、あくまで否定ではなく主人公の成長の答えとして持ってきたのが非常に良かった。敵との関係性も他ヒーローとはかなり違う。

キャップの教育ビデオは果てしなくウザいし年齢を考えれば反発必死だが、見終わってみると多少印象が変わった。スタークも含めてどの口が言うんだ貴様という感覚はあるものの、それがピーターの心理ともリンクしており、ツッコミ所として残しているのだろう。しくじったことのある人間ほど苦言を呈したくなるのは分からないでもない。

また今までのシリーズを見てるとニヤリとするシーンも随所に仕込んでいるため、スパイダーマンの基礎知識と、アイアンマンシリーズ、アベンジャーズは本作を見る上では押さえておきたい。ラストバトルの画は足りないが、ストーリーやヒーローものとしては出色の出来栄えだと思う。

余談だが、ラモーンズの電撃バップは最高のチョイスですね。
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