ベルサイユ製麺

タンジェリンのベルサイユ製麺のレビュー・感想・評価

タンジェリン(2015年製作の映画)
3.6
つい最近、動物園に行きましたよ。目的はコツメカワウソとユキヒョウです。
ずーっとカメラの死んだiPhoneを使っていたのですが、やっと新調したので写真撮りまくりだぞ。ガオー!
コツメカワウソはもう目の前でゴロゴロしてて、なんたる可愛いさ!けしからん!憤っているうちに写真はバッチリ撮り忘れました…。なので、ユキヒョウこそはバッチリ、なんなら全ギガ使い切るつもりで撮ったるぞガォー!と意気込んでたのですが、いざユキヒョウの檻の方に行ったらビックリ!人が壁の様だ‼︎ハッハッハッ!で、その観衆達が全員、もれなく超高価そうなカメラとプリングルスぐらいあるレンズを構えてユキヒョウ様の御姿を撮りまくっているのですよ。ぱぱぱぱぱぱ…。正直この状況でiPhoneでぱしゃりとやる勇気はありません。ジャパニーズ・トラディショナル・フィーリング=KIOKUREです。

何が言いたいかというと、よくiPhoneで映画なんか撮れるなーという…。技術的な事もさる事ながら、なんというか恥ずかしくないのか⁈と思っちゃうのです。作品中、路上で2人(見た目は女性)が大喧嘩してるシーンがあるのですが、コレをiPhoneで撮影…。傍目には只のくずの所業ですよ。心、強いなぁ!革新的な事を試みるには痛みが伴うのですね。或いはそういうの平気な人がいろんな常識を更新するのか。あやかりたい!強い心、強い愛。

ストーリーは有るような無いような。ロスのストリートを2人のトランスジェンダー(もっと適切な言いまわしが有るはず…)が痴話喧嘩したり身体を使ったお仕事したり、歌ったりラリったり。それから、ピンプやお仕事のお得意様のタクシードライバーとワイワイと騒がしくやってるのを、乱暴に言えば“センスの良くないラリー・クラーク”みたいなタッチでダルに撮ります。
…あんまり良さそうに思えないですよね?実際、多分あんまり良くなくて、そこが好きでした。とてもダサい音楽も、やっぱりちょっとチープに思える画質も、なんだか愛嬌があって嫌いになれないです。
かつて知人が「エロスはテレビで見るよりパソコン、パソコンよりスマホの方が良い感じなのだよ」と目を輝かせ語っていたことがありました。メディアとの親密さは心の深くに未知の作用を引き起こすのかもしれませんね。
洗車中の車中での〇〇とか、いくつかのシーンは、撮影環境とか関係なく凄く良いと思えました。エンディングも沁みる感じです。
思ってるより良かったりするかもしれないので、緩くお勧めします。…ひょっとすると、iPhone5sで観るのがベストなのかもしれませんね。