むーしゅ

カットバンクのむーしゅのレビュー・感想・評価

カットバンク(2014年製作の映画)
2.7
 モンタナ州の"アメリカで最も寒い街"カットバンクを舞台に繰り広げられるトンデモサスペンス映画。日本版ポスターは"予測不能"の文字が大きく真ん中にあり、いかにもB級映画感がすごいですが、海外版ポスターはアブラナ畑をバックに割れた眼鏡というわりとおとなしい印象。このポスター好きです。

 田舎町カットバンクに暮らす若者カップルのドウェインとカサンドラは、街を出る資金を稼ぐため偽装殺人を決行し、嘘の情報提供で報奨金を手に入れようとする。ところがうまくいくはずだった計画が思わぬ方向に進んでいき、町全体を巻き込んだ大きなトラブルへと発展していく、という話。誰も傷つかないはずだった作戦が、何にも無い田舎町で殺人事件にまで発展していく冒頭はなかなか面白いです。また「アベンジャーズ」シリーズのソーでお馴染みChris Hemsworthの弟Liam Hemsworthが主人公を演じ、相手役がTeresa Palmer、Billy Bob ThorntonやBruce Dernなど話題になっていない映画にしては出演者が超豪華。特に平和な街の保安官を演じるJohn Malkovich、また本作の台風の目ダービー・ミルトンを演じるMichael Stuhlbargの二人はすさまじい存在感。初めて見た殺人事件に困惑する保安官と誰もが死んだと思っていたほど街には姿を見せなかった引きこもりを見事に演じています。この二人はさすがの役者魂という感じ。Malkovichの驚いたときのあのぎょっとした表情。あれは他の人には出せない顔芸ですね。

 面白そうな冒頭、豪華な役者陣ときて、期待値が高まる中、最後まで見るとすっごく小さくまとまっている。なぜかと考えてみたのですが、まぁ脚本と演出が悪いんでしょうね。初めておきた殺人事件(偽装ですが)に動揺することはわかるのですが、それ以降に起きるリアル殺人がイヤイヤイヤイヤそんなことないでしょ、となっている。このあたりがトンデモ感。「うん、ちょっとみんな一回冷静になろうか」と言いたくなるほどで、一人殺されるごとに映画との距離が広がっていくような気分です。結果的に殺人が起きてしまうのは別に良いですが、とにかくもうちょっと"Calm down"ってお互い言い合ってねという感じ。あっこれタイトル"Calm down"が良いかも。ストーリーがわからなすぎて(理解はできるけど共感はできないような)、1週間経ったら記憶から消えて説明できなくなるような映画でした。

 監督は長らくテレビドラマ監督をしていて、今作が初の映画作品となるMatt Shakman。う~ん、頑張れ。この作品の評価が影響したのかどうなのか、これ以降また映画作品から遠のいていましたが、2017年に「マイロのふしぎな冒険」の映画化を監督するとのことで話題になっていました。次作には期待したいですね。ちなみに日本版キャッチコピーの"予測不能"は、残念ながら視聴者側ではなく、この街に暮らしている人々=登場人物にとって、という感じでした。視聴者側は、まっみんな大変そうだね、くらいです。
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