山本

ザ・サークルの山本のレビュー・感想・評価

ザ・サークル(2017年製作の映画)
3.0
今更感のある内容になってるのは仕方がない。原作は2013年発表。
パブリックとプライベートの境界を情報技術が抹消するという問題はネットが誕生した時から延々とされているわけで、そういうのを知っている人からすると退屈なのだろうと思う。ただそういうのを知らない人からするとちょっとどきっとするんだろうなあと。オチはあまりにも弱い……。

話の中核はプライベートのライブ配信ってどうなのとか、ビッグデータの収集ってどうなのとかそういうことなのだが、ここら辺はもっと展開できるはずだった。①マスに肥大化したメディアは得てして広告屋を呼び寄せる。映画「トゥルーマン・ショー」、東浩紀の掌編「時よ止まれ」などを参照するまでもなく、今のユーチューバーはみなタイアップ動画を作っている。プライバシーを公開することが資本主義と結託することの危うさみたいなのを描ききれてない。②SNSの台頭以来ネットはフローの面ばかり注目されるが、本質はストック。映画の中にもでかいサーバールームがあったけど、このストックへのアクセス権を認めるかどうかがネットでのプライバシー権とほぼイコールになっている。インスタのストーリーだってログは残ってるはずだし、スイカのログだってJRは持ってる。そのストックの恐ろしさみたいなのを描ききれてない。

全く別の話。主人公のメイは最初田舎の水道会社のコールセンター、要は田舎娘なわけだが、徐々に都会のバリキャリへと進化していく。役員会議みたいなのに彼女は真紅のタートルネック姿で現れ、手を挙げて新プロジェクトの構想を話す。それから次のシーンでは、彼女はワインレッドのシャツを着て登壇してプロジェクトについて話す。また別のシーン、「事件」のあとの最後の登壇シーンでは、ブルーのシャツで現れる。このへんの政治家的な服選びがアメリカ的だなあと思った。
山本

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