小一郎

真珠のボタンの小一郎のレビュー・感想・評価

真珠のボタン(2015年製作の映画)
5.0
映画館の上映スケジュールの関係で制作順とは反対に『真珠のボタン』、『光のノスタルジア』の順で連続して見た。二本目を見終わった直後、「これは凄いのを見た」とつぶやいてしまった。もう最高の評価しかない。それぞれの作品を一言で言えば、『光のノスタルジア』は「不生不滅」、『真珠のボタン』は「生者のためのレクイエム」だ。

両作に一貫するテーマは、悲惨な過去から目を背けてはならないこと、我々は宇宙の一部であると認識すること、だと思う。この二つは大きな喪失感、悲しみを乗り越えて生きていくために、是非とも必要なことなのだ。

(以下、あらすじを含みます。)

『真珠のボタン』はとにかく氷、水、海、川の映像が美しい。しかし、その美しさは残酷な記憶とつながっている。

入植した白人によって「真珠のボタン」と引き換えに、イギリス人に連れ出されたインディオの「ジェミー・ボタン」。石器時代から産業革命の時代に渡航し、1年以上経ったあと帰国した彼は、祖国と自由、人生を奪われた。

ピノチェトによる独裁政権下で処刑された何千もの人。軍によって鉄道のレールの重りを付けられ、海に投棄された遺体は1200~1400体。30年後引き上げたレールに1個のボタンが付着していた。

二つのボタンは同じ物語を伝えている。「奪われし者たちの歴史」だ。

水のないところに生命はない。その水はどこから来たのか。宇宙からの彗星だ。インディオは死者は星になると信じている。現代の人間が望遠鏡や宇宙探査機を使って宇宙を調べるのは何故なのか。宇宙を近い存在にすることだ。その原動力は、宇宙への深い郷愁(ノスタルジア)だ。

この映画を見終わった直後、「過去から目を背けるな」というテーマよりも、「我々は宇宙の一部」というテーマの方を強く感じ、スケールの大きさが印象に残った。

しかし、続けて見た『光のノスタルジア』の鑑賞中、ハッとした。『真珠のボタン』で「水には記憶がある」、「水は音だ、音楽だ」と言っていたのはそういうことか! としびれた。この映画は、『光のノスタルジア』があってこその「生者のためのレクイエム」と深く納得した。本当に良い映画体験だった。