小一郎

光のノスタルジアの小一郎のレビュー・感想・評価

光のノスタルジア(2010年製作の映画)
5.0
映画館の上映スケジュールの関係で制作順とは反対に『真珠のボタン』、『光のノスタルジア』の順で連続して見た。二本目を見終わった直後、「これは凄いのを見た」とつぶやいてしまった。もう最高の評価しかない。それぞれの作品を一言で言えば、『光のノスタルジア』は「不生不滅」、『真珠のボタン』は「生者のためのレクイエム」だ。

両作に一貫するテーマは、悲惨な過去から目を背けてはならないこと、我々は宇宙の一部であると認識すること、だと思う。この二つのことは、大きな喪失感、悲しみを乗り越えて生きていくために、是非とも必要なことなのだ。

(以下、あらすじを含みます。)

チリ・アタカマ砂漠。標高が高く、空気が乾燥した広大な空間は、「星に手が届く」場所。世界中から天文学者集う。一方、2000年以上前の村の廃墟があり、考古学者たちが何千体ものミイラを発掘した。

考古学者はもちろん、天文学者も過去と向き合っている。光の速さで月まで1秒強、太陽まで8分。遠く見える星は、何千年、何万年前の光なのだ。「天文学者と考古学者が何故同じ場所を選んだか。それは最も過去に近づきやすい場所だから」。

この砂漠で過去と向き合っている人たちが他にもいる。ピノチェト独裁政権下で処刑され、遺体を砂漠に埋められた人々の親族の女性たちだ。彼女たちは、小さなスコップで、砂漠を掘り遺骨を探している。

処刑の発覚を恐れた政権が遺体を掘り返し、別の場所に埋めたり、海に捨てた。だから、小さな遺骨のかけらは発見できても、全身は見つからない。

20年間遺体を探し続ける70歳の女性は言う。「遺体は海に捨てたという人がいる。しかし、信じられない」。「体が動く限り、全身が見つかるまで探し続ける」。深い喪失感は、本人がそれを納得するかたちで埋めるまで、決して諦められるものではないのだ。

私たちの起源、骨を構成する物質、カルシウムは、ビッグバン直後に作られた。「すべての原子はそこに、自然の中に住むように、我々は星の中に住む宇宙の一部」だ。

チリの天文台で働く女性。1歳の時、祖父母ともに独裁政権下の警察に連行された。祖父母は、両親の行方を教えないと、孫は渡さないと何時間も脅された。両親は逮捕され、行方不明となり、孫は祖父母に渡された。

女性は言う。「生命の大きな流れは私や私の両親、そして子供たちから始まるものでも終わるものでもない、永遠に続く生命のエネルギー。私たちはそのすべてに存在すると思う。新しい星や生命が生まれるためにいつかは消えていく星のように。そう思うと心が少し軽くなる」。

まさに「不生不滅」。何も増えない、何も減らない。人間も宇宙のエネルギー循環の一部だ。だから、亡くなった人は宇宙のどこかで、別のエネルギーとなっている。

人間の問題は壮大な宇宙に比べ、決してちっぽけではない。規模は小さいかもしれないけど、その本質は宇宙と同じくらい大きい。

「記憶はあたかも重力のような力で、私たちの心を捉え続ける。思い出を持つ者は、はかない現在を生き抜くことができる。思い出のない者は、生きてさえいない」。

見終わった後、しばらく呆然とした。久々の衝撃体験。