とえ

LBJ ケネディの意志を継いだ男のとえのレビュー・感想・評価

3.5
切り取る角度を変えると、歴史の違う表情が見えてくる
という歴史の見方の面白さを感じた作品

まず、LBJ という名前になじみがないんだけれども
それは、リンドン・B・ジョンソン元大統領のこと

彼は、上院議員の院内総務(一番力のある人)を務めていて、大統領選挙に立候補するもJFKに負けてしまう

ケネディとは、全く正反対の意見をもつLBJ だけど、ケネディは力のある彼を副大統領に指名する。

ケネディは、敵は外よりも、近くに置いた方がいいと考えたからだ

とはいえ、世間が注目するのはJFKで、LBJの意見が反映される機会などない

ところが、間もなくJFKが暗殺されてしまう

アメリカでは「ベトナム戦争を長引かせた大統領」という評価をうけたLBJだったけれど、果たして本当にそうだったのか…
と、この映画では問いかける

大統領に就任したJFKが推し進めていたのは、黒人の権利を認める公民権であり、国民は
「アメリカに差別のない新しい時代がやってくる」と期待していた

しかし、その、イケメンでスマートなケネディ大統領は暗殺されてしまい、アメリカに「ケネディロス」の波が押し寄せる

そのケネディの代わりに「正しく法律にのっとって」大統領に就任したのは、南部の田舎町からやってきた保守的なおっさんのLBJだった

それまで、LBJは公民権に反対だったけれど、急遽、大統領に就任したことで、反対を貫き通すか、賛成するかの選択を迫られる

このLBJは、田舎から出てきたおっさん丸出しの古いタイプの政治家で、言うことも下ネタ満載だけれど、
どこか憎めないタイプ

彼は彼なりに、考え方は正反対だけれど、国民から絶大な支持を集めるケネディについて、彼が愛される理由を考え、自分も愛される人間になろうと努力していた

そんな彼の裏側の姿がここでは描かれているから、憎めないんだろうと思った

「もしも、JFKが生きていたら、もっと違う世の中になっていた」というのは、よく語られることだけど
「もし、この時ジョンソンが違う選択をしていたら」というのは、あまり聞いたことがない

今、多様性が叫ばれる時代だからこそ、この時のジョンソンの選択について、再考察するべきなのでは…
と考えさせられる作品になっている

勉強不足な私としては、ケネディの次はニクソンだとばかり思っていて
このジョンソン大統領の印象がなく
それだけでも、とても勉強になった映画だった

加えて、そのジョンソンを通して、JFKの偉大さを改めて感じる映画だった

政治とは、権力闘争で勝ち抜くためのものなのか、それとも、国民のためのものなのかを考えさせられる作品
とえ

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