LalaーMukuーMerry

殿、利息でござる!のLalaーMukuーMerryのレビュー・感想・評価

殿、利息でござる!(2016年製作の映画)
4.2
これは、私は本から入りました。磯田道史の「無私の日本人」の中の「穀田屋十三郎」という一編です。作者の磯田道史は古文書を発掘するのが趣味であり仕事であるという歴史学者。歴史もの番組に最近よく登場するので、個人的にちょっと注目していた人物。
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発掘した古文書の内容をもとに作った「武士の家計簿-「加賀藩御算用者」の幕末維新」は映画にもなった。歴史に名を残すことのなかった人々に焦点を当てた、これまでに無い新しい視点からの時代劇作品だった。これ以後、時代劇全体の作風が変わってきたように感じます。
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本作は、仙台藩、吉岡宿のお寺の古文書から見つけた史実をもとにした作品で、「武士の家計簿」と同様に普通の人々である主人公たちの、文字通り「無私」の精神に深く感銘を受ける作品です。従来の歴史教科書には絶対に載らないであろう史実を掘り起こした彼にまず敬意を覚えました。(名を残すことを善しとしなかった先祖のつくった家訓が忠実に守り通され、決して口外されることなく、250年もの間日の目を見ることがなかった史実…)
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映画作品のプロモーションでは、主人公役の阿部サダヲのイメージとか、タイトルの印象、お殿様役を演じた羽生君の話題などが強調されたので、面白おかしいストーリーを予想して見に行った人が多いと思いますが、良い方に裏切られたことでしょう。入り口が何であれ、江戸時代にこのような凄いことをやった名もない人々がいたという事を知っておくことは大切なことでしょう。
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今から200年300年後に、後世の誰かが掘り起こしてくれるような美談が、今の世の中のどこかの片隅で行われていますように…