やし

殿、利息でござる!のやしのレビュー・感想・評価

殿、利息でござる!(2016年製作の映画)
4.3
皆、観るでござる!


普段、邦画や時代劇を好んで観ない方にもオススメできます。

嫁をとった菅原屋(瑛太)は故郷仙台藩吉原宿に帰ってきた。
…が吉原宿では【伝馬】(※)によって村の皆は貧しく、家が潰れたり夜逃げしたりと衰退の道を辿る一方だった。
※お上のための定期的な輸送役で、その莫大な費用は現場持ち

そんな現況を憂う穀田屋(阿部サダヲ)は切れ者と名高い菅原屋に何か良い案はないですかと持ち掛けるも、いきなりそんなこと言われても…と困った彼が思いつきで言ったのが…

《お上(藩主)に金を貸してその利息を伝馬の費用にあてる》

という考え。貸す金額は【千両】。

果たしてその結末は!


ちなみに千両とは、現代の貨幣価値に照らすと約3億円!(!!)
その超高額を廃れた宿屋町の単なる商人がどうやって集めるのか?
そこに奔走するストーリーも十分面白いのだけど、それ以上に興味深かったのは、"お金"という現代でも250年前でも通じるツールを扱って《人とはかくありたい》というテーマ性。


・現状を憂うだけでなく何とかしようと真剣に考えること
・自分だけでは解決できないと判断したら即座に誰かに助けを求めること
・そして案に対して"まずはやってみよう"と即行動すること
・人と人のつながりをもつこと
・真剣な態度が人を動かすこと
・逆境でも諦めないこと
・"自分さえ良ければ"でなく、皆のことを考える想いが強いこと
・事を成しても謙虚であること
・人に蔑まれようが"人のために"と生きること


これら普遍的なテーマを時代劇コメディとして扱い、一つの映画にまとめあげた本作は素晴らしかった。
ちょっとおちゃらけたタイトルやパッケージから、鑑賞前は正直ここまでの作品だとは思わなかったが、間違いなく名作に出会えた。
そして驚きなのがこれが"実話"であること。


浅野屋(妻夫木聡)の正体が明らかになるくだりや、浅野屋と穀田屋の父(山崎努)が子供に「慎むべし」と教えるあたりは是非観てほしい。

日本(特に当時の)を世界に誇れる名作でした。


「人は人を苦しめてはならぬ」
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