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或る終焉のTOTのレビュー・感想・評価

或る終焉(2015年製作の映画)
3.9
在宅看護師デヴィッドと、彼がケアする終末期医療患者。
劇伴なし、固定カメラによる長回し、一定の距離で対象を追うカメラ、説明的な描写を排した編集は、デヴィッドにも患者たちにも深入りさせない。

デヴィッド演じるティム・ロスの声のトーンや優しい手の仕草、表情の細やかさ。
ほとんど映らないが、プライベートの場でも終末期医療患者に接するように抑揚を抑えて静かに話しているのが印象的だった。
まるで自分の生活なんか無いみたい。
内なる喪失を埋めるように患者のケアにのめり込む彼。
患者に必要とされ、彼も患者を必要としている。
彼の真意はわからない。
無口な彼が話す幾つかの本当がありそうな言葉も、彼のつく嘘でさらに不透明になる。

介護や終末期の患者に接したことのある人は少し辛いと思う。
私も祖父母の最後を、特に祖母が死にたいと言ったときを思い出して胸が痛んだ。
でも、作品は患者と看護師、両者をドラマティックに盛り上げることなく、死も神聖視せず、ただ最後の静かな日々を静かに映している。
作品内で起こる様々な出来事もジャッジしようとはしていない。
ただそこに喪失がある、その喪失について考える、それでいいしそれがいいと思った。
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