うめ

或る終焉のうめのレビュー・感想・評価

或る終焉(2015年製作の映画)
3.7
静謐な映画である。

誰にでも分け隔てなくいつかは訪れる“死”
身近に迫った“死”と真正面から対峙しなくてはならなくなった人達。
近づいていく過程をゆっくりとただ静かに描く。
そこには、奇跡もなければ感動的な愛もない。
治療する術を失った患者達を、目に見えない“死”がジワジワと飲み込んでいく。

それを介護するデイヴィッド(ティム・ロス)。
介護の現実の過酷さと残酷さ。
感情的になることなく、真摯に仕事に取り組む姿を演じるティムが良い。
患者の心に寄り添い、彼等の意思を尊重するのだが…
それが時には誤解を招き理解を得られない事もある。
そんなものかもしれないと思いつつも、やるせない。
そして、段々と分かってくる彼がずっと背負い続けているもの。
その想像さえ出来ない重さ。

ラストからエンドロールが…
言葉になりません。
解釈は観る人に委ねているのかな…

人は一体いつ死んでいるのだろうか…
心臓が止まった時?
脳が死んだ時?
心が生を拒絶した時?
身体が動かなくなった時?
“死”はいつでも自分の中にいる。

これから増えてくるだろう身近な“死”
理想の“死”なんてないのかもしれない。
この作品の前では、いささか陳腐になってしまうが…
だからこそ、健康に生きられる今のこの一日を大事にしたいと思いました。
うめ

うめ