しまかす

或る終焉のしまかすのレビュー・感想・評価

或る終焉(2015年製作の映画)
4.7
悲しくて暗い物語だけれど、とてもとても美しい映画だった。長回しでも飽きさせないカメラワーク、敢えてミスリードを誘うような脚本、世界を美しく感じさせる光の使い方や環境音。画面越しにじいと他人の人生を覗き見るような、時間の流れがゆったりとした映画は好きだ。鮮やかな木々や草花、鳥の鳴き声や街の喧騒などがとても印象的で、心地よい。でもそれは、誰かが死んでいなくなっても世界は変わらず在り続けるというメッセージにも取れて、なんだか切なくなってしまった。


終末期患者のケアというのは本当に尊い仕事だなと思う。生い立ちも人柄も知らない相手を突然目の前にして献身的に世話をするだなんて誰にでも出来ることじゃあない。それでも互いに長い時間を過ごして、信頼関係を結んで、そこに血の繋がった家族以上の絆が生まれることはごく自然なことにも思えるけれど、家族としては終わりへと近づいていく身内の世話を他人に任せる後ろめたさがあるのだろう、時にそうした看護師(介護士)を疎ましく思い、遠ざけてしまう気持ちも分からなくはない。ましてデヴィッドは常に空虚なオーラをまとい、喪失感を埋めるかのように看護を行うが、その姿はどこか病的ですらあるのだ。それでもやはり患者を一人の人間として尊重しながら最期まで送り届けようとする姿は誰よりも立派に思える。彼の選択は正しかったのか? 答えは誰にだって分からない。



ずいぶん昔に亡くなった母が、死にたくないと泣いていた日の事を思い出した。デヴィッドのように手を握って、抱き締めて、全てを受け止めてくれるような人がそばにいれば母も救われただろうに、私は良い娘になれなかったなあ。