カツマ

ヴィジットのカツマのレビュー・感想・評価

ヴィジット(2015年製作の映画)
3.8
この映画にはどんな芳香剤も効果はない。数年間、蓋をされ充満し尽くしていたシャマラン臭が爆裂に弾け飛び、画面全体を完全に侵食。そう、かつての『得体の知れないものへの恐怖』をサスペンスタッチで描く一流のB級感が復活している。全編ハンディカメラでの撮影は画面内への没入感を高めると共に、その視野の狭さが得体の知れない恐怖を煽ってくる。シャマランは過剰なほど丁寧に伏線を用意し、それらを律儀に回収し、得体の知れない汚れをしっかりと落としてみせた。シャマラン流オマージュも全編で炸裂。オマージュを追い過ぎるとそれはもはやコメディでもあった。

10代のベッカとタイラーの姉弟は母親の実家へ、1週間の宿泊旅行へと向かうことになった。ベッカは今回の旅行をハンディカメラでおさめ、映画化しようと計画していたのだ。
母はシングルマザーで、かつて祖父母とは喧嘩別れしており断絶状態。今回は姉弟の2人だけで祖父母の家を訪ねることになった。電車と車を乗り継ぎようやく辿り着いた先では優しそうな祖父母が2人を出迎え、手厚くもてなしてくれる。しかし、祖父母の様子は何かがおかしい。夜に徘徊し何事か奇行を働く祖母。家の近くの廃屋に忍び込む祖父の姿。地下室には何故入ってはならないのか、祖父母とこの家に隠された真の謎とは。

これはシャマランがハリウッド映画とは思えないほどの低予算で完成させた王道のホラー映画だ。劇中のラップなんてどう考えても蛇足かと思うが、それを最後に投入せずにはいられない、我らがシャマランの無邪気な遊び心は誰にも止められない!
どこにでもいそうな優しそうなおばあちゃんが、次第に異形の怪物にしか見えなくなる前代未聞の恐怖体験。更にクライマックスでは顔面にブチまける悪臭!メルギブソンオマージュ!これだ、これを待っていた。我らがシャマランの復活を高らかと宣言した、シャマラン新章のはじまりを告げる作品だ。
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