一人旅

メアリー・ピックフォードの シンデレラの一人旅のレビュー・感想・評価

4.0
ジェームズ・カークウッド監督作。

サイレント期の大スター、メアリー・ピックフォード主演による『シンデレラ』の映像化作品。
ストーリーはオーソドックスなシンデレラで特に捻りはない。姉たちにいじめられ抑圧的な生活を送るシンデレラが王子様に見初められ、真実の愛を手に入れるまでの過程を描いている。意地悪な三人の姉と比べてシンデレラ役のメアリー・ピックフォードの体格は一回り小さいから、虐められている感が良く出ている。それに加えて、姉は魔女のような厳つい鼻が特徴的で邪悪感が丸出しだ。シンデレラと三姉妹の暮らしぶりも極端に違っていて、粗末な衣服を着て二階の狭い部屋でひっそり暮らすシンデレラとは対照的に、三姉妹は派手な衣服を身に纏い、シンデレラを奴隷のように扱き使う。清貧のシンデレラと傲慢で欲深い三姉妹の対比が鮮やかだ。
ファンタジックな演出が素晴らしい。1910年代の作品にしてはシンデレラのファンタジックな要素を映像的にしっかり実現できていて、カボチャが馬車になり、ネズミが馬や使用人に変身する。シンデレラに魔法をかける妖精の清らかな美しさや、謎の小人を従えた占い師のおどろおどろしさも印象的。占い師の館の装飾も不気味な雰囲気を醸し出していて、美術面でも出来がいい。また、魔法のステッキや時計、ガラスの靴などの重要な小道具も効果的に使われている。特に、シンデレラの夢の中で、時計の針や数字がぐにゃぐにゃ歪曲したりバラバラになるシーンはシンデレラの不安や混乱を良く表現できている。
ちなみに、DVDには音声なし版(オリジナル)と音声あり版の2バージョン収録されている。音声あり版には各場面に適した日本語のナレーションが挿入されているが、不自然極まりないのでオススメはできない。
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