こたつむり

蜜のあわれのこたつむりのレビュー・感想・評価

蜜のあわれ(2016年製作の映画)
3.8
♪ 不穏な悲鳴を愛さないで
  未来等 見ないで
  確信出来る現在(いま)だけ重ねて

これはニヤニヤが止まりませんね。
何しろ、二階堂ふみさんが金魚ですからね。
タイトでキュートなヒップがシュールなジョークとムードでテレフォンナンバーと言いたくなるくらいに素晴らしいのです。尊いのです。

特に表情の変化が良いですよ。
笑顔から困った顔、更には泣いた顔まで、まさしく大和撫子七変化。見事なまでに金魚である彼女の気持ちを噛み砕くように解釈していました。

しかも、相対するのが大杉漣さんですからね。
彼女の存在全てを受け止めずに流してしまう後ろ姿は小さくて悲しくて。嘔吐するように泣き喚く姿は、枯れゆく着地点を十二分に感じさせてくれました。あー。最後のチャンスって…切ないなあ。

ただ、本作はあくまでも文学。
しかも、時代設定が終戦後の昭和(コカ・コーラの看板が懐かしいです)。何処となく何となく加齢臭が漂う雰囲気なのです。

しかし、そこは石井岳龍監督。
水面に映る桜が散り散りになるように、昭和を描きながらも根底はアバンギャルド。現実と虚構がゆらりと揺れる様を独特の筆致で描き切っていました。

また仄かな(或いは明確な)エロチシズム。
たわわと豊かな膨らみがむぎゅっと潰れたり、ぷりんと弾けたりする様は「監督も好きよのう」と目尻が下がるのです。けしからん、けしからんぞ。

まあ、そんなわけで。
本作の見所は、何をおいても二階堂ふみさん。
そして、彼女役の金魚。
別人(魚)なのに同一人物(魚)に見えてくる演出は見事でした。配役の妙ですな。

でも、人を選ぶ作品なのは確実なので、彼女の溌剌さを受け止めることが出来ないと判断したら撤退するが吉。特に主演2人が素晴らしいだけに、他の人たちが埋没してしまったのは残念でした。
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