秋日和

私、君、彼、彼女の秋日和のレビュー・感想・評価

私、君、彼、彼女(1974年製作の映画)
4.5
アケルマンがこんなユーモアに充ちた作品を撮っていたなんて!という嬉しい喜びでいっぱい。言ってみれば「私」(=アケルマン)が部屋でダラダラ過ごしながら「君」に手紙を書き、部屋の外に出た後ヒッチハイクをして「彼」に出会い、「彼女」の元へ向かっていく、ただそれだけの物語なのに、なんだか矢鱈と面白く感じた。
まず、冒頭30分の「干物女の生態観察」的シーン(言葉は悪いけど)の面白さにクスクス笑いが止まらない。部屋には紙袋に入った砂糖しか食べるものがないのだけど、それをスプーンで掬って食べる仕草一つ取っても可笑しく、更には靴下の脱ぎ方や寝転がり方なんかも脱力モード全開で最高なのだ。ああ、キャラクターの愛おしさって設定じゃなく、細かい動きにこそ宿るんだなと改めて思わされた。そして、その感情は後半の「ファスナーなかなか閉められないシーン」で再度抱くことになる。
……とかなんとか書いてしまうといかにも映画全体が弛緩しているようだけれど、勿論そんなことはなく、観ている側はドキッとする瞬間に何度か立ち会うことになる。特に「彼女」とのくだりがそうなのだけど、ラブバトルと言ってもいいかもしれない二人の交わり合いには本当に驚かされた。緩やかな映画なようで実は結構スピーディー。だから画面には呆気なさが常に漂っている。
また、少し乱暴に映画を「君」、「彼」、「彼女」の三章に分けるとすると、どの章でも「私」が鏡(ときに鏡として機能する窓)に映った「私」自身を見ていたことに気が付く。だとしたら部屋で一人ダラダラ寝転がっているときも、「彼」や「彼女」と一緒にいるときも、駄目な彼女なりに実は「私」の位置をボンヤリと探していたのだろうか、なんてことも思った。アケルマン自身が「私」を演じていただけに、ちょっとゴチャゴチャ余計なことを考えてしまうそうになる。
秋日和

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