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シン・エヴァンゲリオン劇場版のmotoietchikaのネタバレレビュー・内容・結末

4.3

このレビューはネタバレを含みます

とにかくこの結末が観られて嬉しい。もっと長く生きていたら「生きててよかった」みたいな感想になったかもしれない。

なんかもうぐちゃぐちゃで全然上手くないんだけど一生懸命さだけは伝わるし、いい瞬間だけを繋いで走馬灯みたいになってるのも全部ひっくるめて意図的な気はする(シン・ゴジラ的な編集・演出をしなかったことに意図がないはずがない)。有り体に言うとダサいこと全部やってる。

ここには「ダサくてもちゃんと生きていくことのほうがかっこよくね?」という美学が下敷きにあって、それこそセカイ系の終わりというか、社会とか生活を営んでいくことの困難さとカッコよさがある。
綾波が農作業をすることも、アスカがケンスケを選んだ(ぽい)こともそう。
前半の「シンジがQでしでかしたことは最悪なんだけど、別にそんなことは関係なく人はしぶとく生きていくし優しい。その様子に直面して『全部自分のせいだ』って思い込むことすらできなくなって本当にどうしょうもなくなっていくシンジくん」を描いてくれたのが私の個人的な体験にもリンクしてめちゃめちゃ泣いてしまった。

きわめて陳腐で個人的な不安と欲望に基づく人類補完計画に対してようやくきちんとした回答が描かれて嬉しい。ゲンドウってほんまにしょーもねえ!っていうのを変に物々しくせずに等身大のしょーもねえ奴として描いてるのも嬉しい。

結末の「現実に帰れ」でEOEと決定的に違って食らってしまうのは、あれが観客に対する暴力と悪意でしかなかったところを今作ではものすごく誠実な形で応答しているからだろうなと思う。
やっぱり今は誠実の時代なんですよ、良くも悪くも。
鑑賞前に友達と「シン・エヴァでギリギリありそうなあるある」を予想し合ってて「本編が実写になる」と言ってたのが当たったのは笑った。

あと変な角度からの感想だと、あの「エヴァ対エヴァ」の図が完全に『名探偵エヴァンゲリオン』のラスボス戦のそれだったのはやっぱりオマージュですよね?すごいな。
あそこから物語をフィクションとして解体していく演出がブーストしていくのでおそらくそうだろうなと思う。
エウレカ(『ANEMONE』)でもやられたシリーズやスピンオフのセルフオマージュ。作品の問題意識が実はすごく近い作品だと思うのでハイエボの結末が楽しみです。
エヴァのない世界に来てしまいましたが、みなさん、エウレカはまだあるんですよ…!
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