TaiRa

シン・エヴァンゲリオン劇場版のTaiRaのレビュー・感想・評価

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おつかれ、全ての庵野秀明。

どちらかと言えば『シン・式日』という作品だった。宇部の線路をポスターに使った事からも分かるように、精神的には同じ作品だと思う。庵野の帰還。必然的に結末も同じ。どちらも「虚構から現実への逃避(という虚構)」を扱う作品。庵野秀明が『新世紀エヴァンゲリオン』を作った理由、『ヱヴァンゲリヲン新劇場版』を始めた理由、それらを考えればある意味順当な結果でしかないし、みんなそれを分かった上で観ているのも不思議な状況だと思う。ここまで作家に優しいファンダムが他にあるか。庵野秀明の心の平穏を思えばこれ以外ないのだが、映画としてはどうなのか判断が付かない。我々は一体何を見せられたのか。例えば膨大で無駄の多い台詞も、『エヴァ』が一種のプライマル・スクリーム(原初からの叫び)であると思えば許容出来てしまう。分かり切った事でも言葉にしなければ救われない事もある。箱庭映画としての側面もあるから、登場人物の無理矢理な完結だって致し方ない。全て自己完結だから。クライマックスのメタ的なエヴァ対エヴァ=父対子の戦い、そして結末はかつて『幕末太陽傳』没エンディングからの引用を公言した延長、というより最早メル・ブルックス『ブレージングサドル』的な境地で笑えた。もしくは刃牙と勇次郎のエア夜食のレベル。兎にも角にも、庵野秀明が生きている内に過去に折り合いを付け、現在へ帰還出来たのなら、25年の歳月を重ねた事は無駄ではなかったと思う。
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