ツクヨミ

アンナの出会いのツクヨミのレビュー・感想・評価

アンナの出会い(1978年製作の映画)
4.1
シンメトリックな構図とミッドナイトなエクスプレス車内が陶酔しまくりな映像美。
映画監督のアンナは新作の興行のためにヨーロッパ各地を渡り歩いていく…
シャンタル・アケルマン監督作品。特集"シャンタル・アケルマン映画祭"にて鑑賞、アケルマン監督作品の中でも移動が多い本作は一種の陶酔感を覚える仕様になっていた。
まずオープニング、駅のホーム階段前をキッチリした左右対称のショットで映していくスタイルに面食らった。カメラワークが電車や人間たちが動いても一切動かない仕様はちょっとした小津調を感じさせる。そして前半はことあるごとシンメトリックな固定カメラ構図塗れですごい…階段や車内のシンメトリック映像では奥行きをうまく使った描写もありキューブリック的映像美を感じるショットも多発。この時点で既に眺めるだけでもなんとも美しい映像に唸った。
また主人公アンナが夜汽車に乗ってからのシークエンスは一種の陶酔感を覚える。暗い車内座席に座るアンナをまっすぐ映したショットに始まり、車内の廊下をまっすぐシンメトリックに映す描写や横から車内を捉えたショットなど構図力が素晴らしい。そして車内から外を見ると見えてくる移り変わりゆく夜の景色はヴィム・ヴェンダース監督のロードムービー感を想起する旅感覚が最高にキマる。このシークエンスにずっと浸っていたいと思えるほどに素晴らしいロードムービー要素だ。
しかし後半はアケルマン的長回しがちょっとくどいと感じるシーンが多く、だれた感じがしたのは確か。だがこのだれた感じが女性の鬱憤した憂鬱を感じさせる材料ではあるし、ラストの何とも言えないアンナの表情を形あるものにできたのもある。アケルマン的長回し良さと悪さがキッチリある作品だが、シンメトリック要素とロードムービー感が最高に陶酔できる点をすごく評価したい。
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