真っ黒こげ太郎

タクシーハンターの真っ黒こげ太郎のレビュー・感想・評価

タクシーハンター(1993年製作の映画)
4.5
「復讐じゃない!!!モラルの欠片もない運転手が許せないんだ!!!」
「罰を受けるべきだ!!!だから僕が罰を下してる!!!」



ヤクザの抗争やらタクシー業界の素行の悪さやらで荒れに荒れまくる香港。

妊娠中の妻と幸せに暮らす、サラリーマンのキン。
ある夜、産気付いた妻を病院に連れてゆくためにタクシーを呼ぶキン。
しかし、素行の悪いタクシードライバーが乗車拒否、更には事故とは言え妻を引きずってしまい、妻子共に亡くなってしまう。

妻子を失った悲しみから、仕事も身に入らなくなってしまい、心身共にボロボロになってしまうキン。
そんな中、素行の悪いタクシードライバーに出くわし、悲しみをぶり返してしまったキンはタクシードライバーを殺害!!!

怒りに燃えるキンは銃を手に入れ体を鍛え、素行の悪いタクシードライバーに対して制裁を開始した…。



素行の悪いタクシー運転手の所為で妻を失った男が、タクシー運転手に制裁を加えるヴィジランテ映画。
「八仙飯店之人肉饅頭」、「エボラ・シンドローム/悪魔の殺人ウィルス」の監督&主演作3作目は、悪の運転手を裁くヴィジランテ物!


今作では前2作の様な狂気描写やインモラル描写といったイカレた作風は鳴りを潜めた、実に王道なヴィジランテ作品となっている。
相変わらずモラル無視な場面があったり、警察側はコメディタッチで描かれてたり、何とも汚い喰い方をするオッサンが居たりと癖のあるシーンはありますが(まぁ香港映画ですからw)、内容自体は実に正統派で社会的なヴィジランテ・アクション物です。
(まぁ監督は後に真っ当なアクション物も手掛けてるしね…。)


今作では妻をぶっ殺された男が、「タクシードライバー」相手に「狼よさらば」する話。
実際、スコセッシ監督の「タクシードライバー」を意識した場面があったり、「狼よさらば」みたく初の殺しで戸惑ったりとオマージュしてそうな場面も。
(主人公がズブのシロウトな所は「デス・ウィッシュ」っぽくもあるかも。)

一見「香港のタクシー業界の荒れっぷり」という社会派になりそうな内容だが、香港映画らしくド派手なアクションが繰り広げられたりと娯楽精神も忘れない。
今作のカーアクション&スタントは香港映画らしくかなり無茶苦茶やっているので、アクション映画としても楽しめるぞ!!!w

主人公が段々と処刑者になっていくドラマもテンポ良く見せており、最後まで飽きずに楽しめます。
今作ではタクシードライバーのクソ野郎っぷりを徹底して描いており、主人公の制裁シーンにカタルシスを与えてくれる。
ラストは余韻のあるラストで意外にも後味は悪くなかった。

後、今回のアンソニー・ウォンさんは以前見た2作が嘘のように思えるぐらい、優しそーなリーマンを演じている!!!
あのクレイジー映画2作の時と同じとは思えねーぐらい(笑)、人の好さそうなおっちゃんを好演してました。
アンソニー・ウォンさん、スゲェなぁ…。


それにしても、香港のタクシー界隈ってこんなに物騒なのか?w
流石に着色入ってるとは思うが、こういう内容の映画が作られるんだし恐らく荒れに荒れてるんだろうな…。
取り敢えず香港に行ったら、タクシーに乗るのは遠慮しときます。w
(そもそも行く機会がないけどさ)


前2作の様な狂気っぷりやキチガイっぷりを期待したらハズすと思いますが、内容自体は娯楽と社会派のバランスが良いヴィジランテ物で、かなり楽しめました。

香港映画故の荒っぽい所や変な所もありますが、この監督&主演タッグの作品の中では観やすい方なので、入門用としてもオススメです。w

「町のクズども相手に、法に変わっておしおきよ!」的な映画が好きな人は観て損はないと思うぜ。