クレセント

ゴッド・タウン 神なきレクイエム/ゴッド・タウン 裁かれる街のクレセントのレビュー・感想・評価

4.0
フィラデルフィアの片田舎にある新聞社のコラムニストは、こう言って一人の若者の死を取り上げた。最近まで人は死ねば終わりだった。ゴッドタウンと呼ばれる町の人間たちのことである。昔だったら23歳の作業員が死ねば、地方紙に小さな記事が載るだけだ。だから2度目の死に煩われずに天国に行っただろう。レオンの死について本誌は誤報を載せた。重要人物ではないと考えたからだ。レオンは典型的なこの町の男だった。顔は薄汚れていて、学もないが、身なりだけは気を遣っていた。彼らは働き、結婚し、子供たちも町に住む。結婚後も実家を出ない。酒を飲む決まりの場所は場末のバーだ。そこでは皆わかりもしないことをしゃべる。政治や人種差別や宗教についてだ。そして最後はみなと同じように死ぬ。家族に家と思い出を残して死んでいくのだ。そしてそれは彼らにとっては威厳のある死なのだ。だから我々はここに謝罪をしよう。レオンと彼を愛していた者たちに。もし我々が彼の物語に耳を傾けないなら、この物語は誰にも届くまいと......。フィラデルフィアはニューヨークとワシントンに挟まれた土地だ。だからこの町はだれもが通り過ぎて行く。よそ者は敬遠され町のうわさはだれ一人知らぬものはいない。場末のバーはたまり場でそこには都会から取り残された者たちだけの天国がある。この物語はそんな見過ごされたアメリカの日常に光を当てて、そこに暮らす人間たちの営みを描き出した。アメリカは広大である。大都会に阻まれたゴッドタウンのような町は掃いて捨てるほどある。
クレセント

クレセント