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私はゴーストのよーだ育休準備中のレビュー・感想・評価

私はゴースト(2012年製作の映画)
3.0
あちゃん考案の【タイトルしりとり】
新年一発目はちょっと勇気を出して、自分では絶っっっ対にチョイスしないであろうホラー作品にしてみました。フ!

From あちゃん:リトルプリンス 星の王子さまと[私]

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        ルール
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 ・映画のタイトルでしりとり
 ・フィルマ記載の邦題(サブタイトル込)
 ・回す1文字はパスする人が指定できる
 ・受け取り後1週間以内に回すこと
 ・ハッシュタグ #タイトルしりとり

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郊外の邸宅で変わり映えのしない日々を過ごしているEmilyは、自分が死亡した事に気付かないまま彷徨い続ける霊魂だった。ある日、母の寝室で『自分を除霊するためにやって来た霊媒師』と名乗る姿の見えない女性の声が語りかけてくる。彼女との交信を通じて、Emilyは自身の死の真相を少しずつ思い出していく。


◆ 独特なシーンの切り貼りが続く前半。

ベットから起き上がって、卵を焼いて、朝食を取って、洗面台で髪を整えて、廊下を掃除して、買い物に出かけて…。同じ様なEmilyの日常生活動作がぶつ切りとなって延々繰り返される前半部分は、ホラー作品が苦手な僕でさえ身構える事を忘れてついつい退屈してしまいました。長い年月、彼女が其処に居憑いている事をあらわす演出だったのかもしれませんが、ちょっと冗長に感じてしまった。

Emilyを成仏させようと交信を試みる女性霊能者Sylviaとの会話の中で、Emilyが《自分の死》を認識してからようやく物語が動き出します。何度も繰り返されていた日常は、彼女が生前の記憶を追体験していただけに過ぎず、彼女がそれを自覚する事で《生前の記憶を追体験する自分を客観視できる》様になりました。

そして、自分が忘れていた、忘れたくて消したかった《後ろ暗い記憶》と向き合う事で、彼女は完全にこの世の因果から解き放たれることになります。76分という短尺の作品でありながら、ホラーが苦手な僕を飽きさせるほどに繰り返されていた似た様なシーンの連続。それは、物語が進むにつれてレイヤーが重なって一つの絵になる様に、徐々に本作の全体像を浮き彫りにさせるという構造になっていました。最後まで忍耐強く頑張れば、この発想はそこそこ面白い。


◆伏線を回収し始める怒涛の後半。


※以下、ネタバレ有りです。

今作のホラー映画たる所以は、ラスト20分で現れる《demon:悪魔》との邂逅です。【私はゴースト】のタイトル通りゴーストが題材となった作品ではありますが、《ゴーストの目線で物語が展開していく》一風変わった作品であるため、ゴーストそのものは全く怖くありません。今作で怖い思いをする事になるのはゴーストの方なのです。

悪魔憑き=解離性同一性障害(多重人格)という見地が物語の肝になっていました。主人公のEmilyは生前、厳しい母親の教育的指導の下で折檻部屋に監禁されるという辛い過去を持っていました。そして、そんな彼女はいつからか自らの頬を殴りつけたり、バターナイフを手に突き刺したり、自傷行為を繰り返す様になった過去が明かされます。

耐え難い苦痛から逃れる為の防衛反応として自分の心の中に新たな人格を形成してしまう精神疾患の一種。医学が発達する以前は《悪魔憑き》などの超自然的なものであると考えられていた様ですが、今作ではここにスポットが当てられています。悪魔と呼ばれる別人格を死後の精神世界で具現化し、辛い思い出を引き受けた彼の『自分も自由になりたい』という心の叫びを伝えていました。Emilyがなんてこと無い平穏な生前の記憶を追体験していた一方で、悪魔は生前の折檻部屋での耐え難い記憶に苦しめられ続けていました。

…めちゃくちゃ同情する余地があるのに、見た目があれすぎて全く擁護する気になれないのが余計に可哀想なところ。


◆何が起きたのかわからないラストシーン。

SylviaはEmilyが自分の死を自認しているにも関わらず成仏しない事に首を傾げている様でしたが、『彼女の中にもう一人の別人格が存在していたこと』が彼女がすんなり成仏できない理由でした。悪魔もまた、自分の死を(つまり、自分で自分を殺した事を)理解した事でEmilyはついに成仏へと向かいます。が、その過程はこれまた恐ろしいものでした。

『光に導かれて成仏しなさい』と何度も繰り返し唱えるSylvia。ですが、Emilyたちに差し込む光はどこにもなく、ただただ部屋中がどす黒い闇に包まれていきます。霊魂が死に向かう事の恐怖が描かれていましたが、これは何を示していたのでしょうか。

①地獄に堕ちる様子を示している。
自殺をしてしまった事。そして何より、悪魔が憑いていた事から、死後彼女は地獄に堕ちてしまったために暗闇に包まれていった可能性。あまり宗教的な作品には感じられませんでしたが。

②成仏は幻想である事を示している。
死後の世界は我々にとって都合のいい想像に過ぎず、光に導かれて昇天するなんていうのは人間の都合のいい願望にすぎない。霊能者の言葉は幻想であり、死後の魂はただ消滅して無に帰すのみであるという事を描いていた可能性。彷徨う霊魂を主人公にしている事と矛盾がある様にも感じますが。


ラストは前半とはうってかわって畳み掛ける様な展開に目が回りそうで。最後は何が何だかわかりませんでした。映画の冒頭で提示された、主人公と同名のEmily Dicksonによる詩がヒントになっているとは思うんですが、僕の英語力ではこの詩の真意を捉えることはできませんでした。