emily

私はゴーストのemilyのレビュー・感想・評価

私はゴースト(2012年製作の映画)
3.5
人里離れた一軒家で淡々とした日々を過ごしているエミリー。ある日彼女の耳にある女性の声が聞こえる。それは霊媒師のシルヴィアの声で、彼女を成仏させるために交信を行っている。なぜ死んだのか?その謎を解き明かし向き合う事でなんとか成仏の道へ導こうとするが・・

 ぐるぐる日々が暗転を繰り返し重ねられ、やがて同じ事の繰り返しであることに気が付く。さらに倍速でエピソードが交差し始め、アンティーク感のあるインテリアの中で繰り返されるそれは不気味にめまくるしく、徐々に息苦しくなってくる。生きてる人間の姿は一切出てこない。聞こえてくるのは霊媒師の声だけだ。時折人の声と思わしき声も交わるが、存在する館にいながら、別の次元に居る。やがて霊媒師により彼女が幽霊であることが明かされる。そこから過去をたどっていくのだが、回想のイメージ映像が小刻みに交差し、やがて思い出す。しかしそこからの闇はかなり深い物である。扉の向こうに広がる虚無。どんどん引いていくカメラにより暗闇の中に扉の前に立つエミリーが不気味に浮かび上がる。

 イメージの交差はどんどんスピードを上げて加速し、2分割から4分割へ、幻の自分を客観的に見る自分がいて、そこから明かされる事実に成仏できない理由が隠されており、死んでもなお苦しんでいる。モノクロからカラーへスピード感のある映像と色彩の中で、目指す光に向かって映像が加速していく。

 幽霊の目線で捉え、さらにそこにある苦悩を映像で見せていくのは面白い。そうして本作のラストはまだその道に向かう序盤でしかない。すべてが彼女が作りあげた幻想であり、それは映画という作り物の世界とも交差していく。
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