ねこたす

ぼくの伯父さんのねこたすのレビュー・感想・評価

ぼくの伯父さん(1958年製作の映画)
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あまりに傑作すぎてびっくりした。

古き良き時代のサイレント映画の喜劇の要素と、計算し尽された構図の美しさ。

冒頭工事現場に重なるように標識に焦点が合う。フランス語が分からないから何かと思ったら、クレジット表示だった。
そのまま、何匹かの犬が走り出して8分経つまで台詞という台詞がない。
そもそも、監督ジャック・タチ扮するユロ伯父さんがほぼ喋らない。それを補うような動きや表情。

先に「イリュージョニスト」を観ていたこともあって、ユロ伯父さんが本当に実在する!動いてる!という感動がとても強かった。歩きはじめる時にちょっと体が斜めになったり、手をモミモミしたりする仕草が、イリュージョニストのアニメで再現されていたんだと驚いた。
あちらも、言葉が通じないコミュニケーションの為サイレント映画のような作りになっているが、この作品からしっかり影響を受けていたんだなあ。

そして、作りこまれた画面にも驚いた。台詞が無くても、どういう場所で状況がどうなっているか一目見ただけで分かる。
ユロ伯父さんが暮らす古めかしい建物を正面から捉える。このワンカットで持たせるのは相当勇気のいることだろう。そこでも小さいギャグを挟みこんで、観客を退屈させない。

対照的な「ぼく」が住むモダーンなお家。前衛的な家具や庭のデザイン。そこまでする必要あるか?と疑問になる自動化されたキッチンやドア。
そこでユロ伯父さんが巻き起こすドタバタコメディも、普通の人には理解できない。フランス人の気取った部分や、何度か挿入される壊される旧市街のイメージと対比させ懐かしさへの思い等いろいろ読み取れそうだ。

喜劇映画にとってのギャグは、観客がその後を想像してそれが画面内で起こることでクスッとなる。ジャック・タチが作る笑いは分かりやすく、説明的ではないので子供向けでもありそうだ。

オチもちょっとの穏やかさで、派手ではないけど人を惹きつけるこの映画を象徴しているようだ。一昔前より手にしやすくなったようなので多くの人に見られるとよいのではないだろうか。このDVDを置いていた図書館に感謝感謝。