TaiRa

ぼくの伯父さんのTaiRaのレビュー・感想・評価

ぼくの伯父さん(1958年製作の映画)
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ジャック・タチの色彩感覚とかアートセンスが爆発してる。

早朝の街を犬ちゃんたちが走り回るオープニングからして好き。謎インテリアの豪邸に暮らす家族の朝の風景、音楽に同期した形で道路を走って行く車の数々。均一化、工業化、モダンな街並み。一方、下町のアパルトマンに住むユロ氏は馬車で登場する。真正面から見たアパルトマンがお洒落でかわいい。ウェス・アンダーソンが影響受けたのはこれか。豪邸に住む家族はユロ氏の妹夫婦とその息子である。義弟の工場でユロ氏を雇うがてんでダメなので甥っ子の面倒を見る。甥っ子が悪ガキとするいたずら場面も良い。空き地でおっさんが売ってる揚げパンが大変に美味しそう。ホース工場でユロ氏が巻き起こす失態もしょうもなくて良い。同僚が爆笑してるのが何とも言えない魅力を生む。ソーセージのようになった大量の真っ赤なホースが内蔵みたいでグロテスクだし、やおらそれを纏めて川へ投げ捨てるのも死体遺棄みたいでブラック。豪邸の庭にある魚の噴水を何度もギャグにするしつこさとホームパーティーでのベタなギャグが普通に面白い。植木を折っちゃった甥っ子の犯行を隠蔽する為にユロ氏が枝をどんどん切っちゃうのと、その仕上げを夜中に忍び込んでまでやりに行く流れが馬鹿馬鹿しい。その時に二つの丸い窓に人影を入れて人の目のように見せるのがまたキュートなビジュアルを生み出す。厄介者扱いされたユロ氏が街を追い出されるという切ない幕切れが不思議な余韻を残す。最後にまた犬ちゃんたちが登場するが、それを白いカーテン越しに見せるラストショットがとても良かった。
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